昨日、「幻想運河」を取り上げた際に、この本の中で言及されていた初期ピンク・フロイドについても少しばかり書いてみましたけども、ミステリとロックミュージックの繋がりについて論じたものってないかしら、と書棚を探してみたら、とりあえずひとつだけ見つかりました。
ミステリ・マガジンの2001年2月號。
この月の特集は題して「ミステリ・ファンにおくる音楽特集」。概してミステリマガジンのような高尚な雜誌でロックについて言及したものはあるまい、などと考えていたのですけど、ひとつだけ。三橋曉という書評家がロック篇として「徹頭徹尾、ロックンロール」という文章を書いています。しかし、「ロックンロール」といっているあたりから既にヤバそうなんですけど、本文のなかにも、
ところで、ロンドンで上がったムーブメントの狼煙があまりに強烈だったために、ややもすると忘れられがちではあるが、実はパンク・ロック発祥の地は、大西洋をはさんだ対岸のニューヨークだった。
という奇説(というか私が知らないだけなんですか?それともこれって定説なの?)を披露してくれています。ここでパンクロックの例として、パティ・スミス、テレヴィジョン、トーキング・ヘッズを挙げているのですけど、へえ、……「Remain in Light」ってファンクじゃなくて、パンクだったんだ。初めて知りました。
それと、この論文ではパンクの発祥について言及しながら、ピーター・ハミルの「Nadir’s Big Chance」については何んにも語っていないんですけど、……音楽評論家じゃなくて、書評家だからこの程度の文章でもいいんですか?いや、私が間違っているのだろう。
今回はミステリとロックについて話をするのであった。話を戻して、と。この「徹頭徹尾、ロックンロール」で引き合いに出されている日本のミステリでは、やはりというか、法月綸太郎の「再び赤い悪夢」が取り上げられています。キング・クリムゾンの「Red」に収録されている「One more red nightmare」の日本語訳まんまですもんねえ、このタイトル。ほかにも法月綸太郎って、「誰彼」のなかで出て來る妖しげな新興宗教のセレモニーを眺めながらフロイドについて言及していませんでしたっけ。手許に本がないので確認出來ないんですけど、暇があったら調べてみよう。
さしずめ今であれば、ロック絡みでどんなミステリが挙げられるかな、と考えてみると、まずは昨日取り上げた有栖川有栖の「幻想運河」、そして忘れてはいけない、これまた法月綸太郎と同じく、キング・クリムゾンリスペクトの鳥飼否宇の「太陽と戦慄」あたり。プログレ以外だと、島田莊司のビートルズ、マイルスあたりですかねえ、私が憶えているのは。そのほかに何かこれは、というのがありましたら教えてください。