さりげなくタナトスものとも繋がっているゆりっぺシリーズの第二弾。前回は最後に爆破事件でテンヤワンヤとなったゆえ、部活動はいったいどうなっているのかと思っていると、連中はまたもやひそかに行動を開始、イジメやら密かに進行する殺人計画を気取った部員たちが、時には華麗な推理を披露して事件を解決どころか引っかき回す、……というのがおおよそのあらすじながら、連作短編とするにはそれぞれの繋がりは希薄、さらに一話へのネタの盛り込み具合も前作に比較するとやや薄め、と来ればアレなんじゃあ、となるのがフツーながら、実をいうと前作以上に愉しめました。
このシリーズは、ゆりっぺや杉野二号をはじめとした濃厚な萌えキャラをグフグフしながら愉しみつつ、参考文献が『ガリレオ工房の身近な道具で大実験』とある通り、作中に投入された「身近な道具」を使ってあんなことやこんなことができてしまうというプチ教養を堪能する、――というのがオススメの読み方ながら、今回は前作以上に古賀君のドンヨリとしたネクラぶりが前景に押し出されているのがミソ。
事件らしい事件といっても後半に大展開される殺人計画を除けば、騒動と名付けた方がシックリ来る出来事が点描されるなか、トラウマボーイである古賀君の受難と、杉野二号も含めた部員たちのノー天気ぶりのコントラストは前作以上に際立っているところがシリーズものとしてはツボながら、そうした縦軸の背景には殺人計画に絡めてあの人物の悲哀が絡めてある結構が秀逸です。
またその殺人計画にはタイトルにもある動機未だ不明という絶妙な謎を凝らしつつ、このシリーズならではの「身近な道具で大実験」の凶器ネタをさりげなくその伏線にしてあるところなど、本格ミステリというよりは、どちらかというとキャラ小説として愉しむべき一冊ながら、そうした技巧がしっかり活かされているところもいい。この動機のネタと並んでお気に入りなのは、中盤の脱獄君に絡めた軽やかな転倒で、このあたりの小技をしっかり効かせてスマートにまとめてみせる手腕には、現代本格的な大ネタで長編一篇を支えてみせた傑作『リッターあたりの致死率は』とはまた違った趣があります。
キャラものとして見た場合、やはりゆりっぺのどこか達観したともいえる語りが秀逸で、読者サービスとして注目すべきはやはり「Secondmission 6」で体育倉庫に皆をして閉じ込められてしまうシーン。「トイレをどうしよう?」という杉野二号のつぶやきから「グヘヘ、いよいよゆりっぺの放尿シーンが見られるぞッ。さすがは大明神ッ! 乾石持というエロミス二巨頭の尿に対するこだわりをリスペクトしつつ、果たして御大の『ハリウッド・サーティフィケート』でレオナが野郎の前で放尿してみせたあの名場面を凌いでみせるかッッ!」と期待させつつ、そうした「需要のある排泄シーン」がどうなったのかはまア、読んでのお楽しみとなりますが(苦笑)、――個人的には本作、そうしたエロを離れたところで、ゆりっぺというキャラの優しさを見られたところは収穫でありました。
今回はメインシリーズのあの人が幕引きにも登場、となかなかに出番が多かったゆえ、タナトスの方で今後、ゆりっぺが絡んでくることもあるのかな、とか期待して次作を待ちたいと思います。