同じミステリーYA!シリーズからリリースされている「タイムカプセル」の姉妹編。姉妹編、というのがどういう意味かといいますと、「タイムカプセル」の事件があった隣の教室でのお話という設定でありまして、同じ学校でこんなに妙チキリンな事件が立て続けに起こるとはいったいどういうところなんだよ、と思わずツッコミを入れてしまいたくなるものの、そのあたりがまた意外な眞相に絡んできているところなども含めて本作、なかなか愉しめました。
物語はまたまた例によって、かつてのクラスメートで集まって同窓會をやりましょう、なんていう奇妙な葉書が送られてくるものの、皆が皆、その差出人の名前には一向に心當たりがない、というあたりから、その人物とはいったい何者なのかという謎が呈示されるとともに、その人物が怪しい同窓會を畫策する動機や、さらには学生時代に担任だったキ印教師を成敗するために企画した肝試し大會の夜での出来事などなど、――過去と現在を交錯させ、複数の視點で物語を進めていく結構は折原ミステリの眞骨頂。
本作では、この同窓會のお誘い葉書の差出人とともに、「私」という人稱で語られる謎の人物のモノローグなどが誤導の装置として機能しているところも秀逸ながら、個人的には、不穩な雰圍氣を孕んだプロローグが最後の眞相開示を通過した後、まったく違ったシーンとなって立ち上がってくるところなど、折原ミステリというよりは、何となく中町センセを彷彿とさせる仕掛けに參りました。
ボーイッシュな美人教師や、いじめられっ子だったコンビニ店長など、学生時代のキャラを引きずる彼らが再會して謎めいた同窓會を眞相の核心へと近づいていくところなど、ミステリーYA!シリーズらしい後半の展開もスリリングながら、本作の場合、やはりこのシリーズということを意識してか、折原ミステリらしいブラックさに転ばず見事な着地を決めてみせた、プロローグの仕掛けの眞相が素晴らしい。
また時系列を意識しながらの讀みによって、プロローグの場面とこの物語の中で語られていた同窓會の因果關係を把握するにつけ、「犯人」の悲壯が際だってくるところも秀逸で、繰り返されるプロローグによって物語を幕とする結構がまた絶妙な效果をあげています。
キャラ的にはビュンビュンと竹刀を振り回すDVのゲス教師が強烈で、特に前半は執拗なほどに、登場人物の皆が皆、夜道を歩いていてはビュン、部屋ン中で考え事をしていると夜風がビュン、という音に聞こえたりと、とにかく執拗なほどにビュン、ビュンと幻聴がリフレインされる偏執ぶりも折原ミステリらしさがイッパイで好ましい。
袋とじなど下手な仕掛けがないぶん、個人的には「タイムカプセル」よりも愉しめたとともに、プロローグの仕掛けが見事に決まっているところなど、謎めいた人物の暗躍と変態君の大活躍を期待してしまう折原ミステリのファンのみならず、個人的には中町センセの愛読者にも手にとっていただきたいな、と思った次第です。