今日電車に乘ってボーッとしていた時にフと思いついたこと。
火村探偵の例の台詞、「人を殺したいと思ったことがあるから」なんですけど、もしかして作者の有栖川有栖は國名シリーズのラストで「レーン最後の事件」をやろうとしているのではないか。
いや、それだけです。
今日電車に乘ってボーッとしていた時にフと思いついたこと。
火村探偵の例の台詞、「人を殺したいと思ったことがあるから」なんですけど、もしかして作者の有栖川有栖は國名シリーズのラストで「レーン最後の事件」をやろうとしているのではないか。
いや、それだけです。
勿論長編も好きなのだけど、端整な、そして味のある短篇も書くことの出來る作家さんに惹かれます。例えば半村良。例えば筒井康隆。例えば小松左京。ミステリでは連城三紀彦や泡坂妻夫、そして島田莊司といったかんじでしょうか。ミステリ、SFと畑は違えど、小説としてかたちのある結構のある物語、つまりしっかりとオチのある短篇を書くことの出來る作家というのはやはり安心して讀めますよねえ。しかし現代ではこういう作家は寧ろ古くさいということになってしまうのかもしれません。奇異を衒った小説ばかりじゃ、さすがにお腹が一杯になってしまいます。
で、今回取り上げる村田基。これがもう、半村良、小松左京の直系というかんじの素晴らしい短篇を仕上げてくれる作家さんなのですね。SFというよりはホラーというカテゴリに分類されているのでしょうけど、七十年代だったらこれはSFでしょう。まあ、分類はどうでも良いです。とにかく本好きの人間をうならせてくれる短篇の名手でありまして、その持ち味は獨特の狂った世界觀を持った狂氣と女性の持つグロテスクな側面を見事に表現してくれるあたりでしょうか。
本作で一番イヤ感が炸裂していて、夢に見そうなのが「人形のような女」でして、個人的には一番イヤな短篇という点では一二位を争うほどの出來。先入觀を持たずに讀んでもらいたいので敢えてあらすじは述べませんけども、とにかくイヤーな話です。特に男性にはキツい。狂氣という点では「闇の中の告白」の讀後感も素晴らしくイヤーなかんじで、捨てがたい魅力があります。
その一方で、漠然とした不安感や世界觀の搖らぎを見事な短篇に纏めてしまったのが例えば「黒い猿」。これなど半村良的というか、あのころの奇妙な味の短篇を思わせる切れ味が素晴らしいです。
「不安な朝」もまた小松左京的というか、筒井康隆的というか。いずれも短篇としてのオチのつけかたが巧みなのですよ。
そして本作をしめくくる表題作でもある「愛の衝撃」。狂氣なのか純愛なのか、あるいはその兩方なのか、というものを主人公の私は落ち着いた筆運びで淡々と語ります。そして破滅を予感させつつ、歪んだ美しさを湛えたラスト。當に本作の最後に飾るに相應しい作品ですねえ。
現在のところ、早川からは本作と「恐怖の日常」という二作がリリースされているのですが、いずれも捨て難い魅力があり、どちらもおすすめ。