ECM NEW SERIESで聖歌隊、そしてサックスとのコラボとくれば、当然先に紹介した「Officium」を想起してしまうのだけども、同じ組合せでもここまで違うかと驚いてしまう。
「Officium」がひたすら靜的な世界を描いていたのにたいして、こちらはひたすら恰好良い。ダサい言葉でいうと、音がスイングしているんですよ。この違いは何かな、と色々と考えてみたのですけど、ソールズベリー大聖堂のパイプオルガンが大きいのではないかな、と感じた次第です。
コーラスとサックスの音が途絶えた瞬間、この荘嚴なオルガンの音が飛び込んできたりする展開(「The Sons」の二分あたりとか)は、まさにプログレ。毛色は違うけども、エニッドのロバート・ジョン・ゴッドフリーのソロの最後の曲なんかに雰圍氣は似ているような氣がします。とにかく「Officium」とは対極にあるような音です。
もう少し「Officium」と比べてみますと、パイプオルガンのドローンをガルバレクはサックスの持続音で代用してように思うのですけど(例えば二曲目の「Primo tempore」)、サーマンのこのアルバムでは何の躊躇もなく、重量感のあるオルガンを使い、サックスはとにかく歌う、歌う。スイングするわけです。このアルバムでオルガンはドローンだけに使われているわけではなくて、聖歌隊やサックスと一緒に歌ったりもしてしまうんですねえ(「The Kings」)。とにかくあらゆる意味で型破りで、オルガン、サックス、聖歌隊という組合せからこちらが想像してしまう音を良い意味で裏切ってくれる傑作だと思います。