水乃サトルの長編第一作、ということになるのでしょうか。ちょっとこれは、というかんじですかねえ、個人的には。
作者もあとがきで述べているように「軽い讀み心地という點を一番大切にし」た物語でさくさく讀めてしまうのは良いのだけども、謎解きも驅け足だし、今ひとつ讀んだ!という充実感に浸ることが出來ない。
まあ、時代を感じさせる小説であるというのもあるかもしれません。例えば探偵である水乃サトルが失踪した芸能人を捜す時に使うのがパソコン通信。當事は先進的なものだからと小説に使うと、陳腐化した時にちょっとイタいという見本になってしまっているところがまた悲しい。「諏訪湖マジック」密度の濃さを体驗してしまった自分としてはちょっと點は辛くなってしまうのであった。
それでも水乃サトルの描写は面白いし、彼を慕っている由加理も良い味を出しているので、ミステリ風味の小説でも息抜きに讀んでみるかな、という人にはおすすめの一册。