印度のシーナ・シャンドラといってピン、と来ない人も、最近日経新聞のテレビコマーシャルか何かで、「ドンダダドダダダ……」という声を聞いた記憶はあるはず。あの「ドンダダ」いってた人、といえば分かるでしょう。
で、この「Quiet」は全編あの素晴らしいスキャットで仕上げてしまったという傑作。
といっても、ビョークの「Medulla」のような奇拔さはなく、印度的な樂器使いもあって、結構あっさりと聽けてしまうところが良い。
東洋人だったら琴線に触れるような、いかにも印度というような旋律のオンパレードで、同じ唄ものでも、先に取り上げた多加美の創出した土俗的な音空間や質感とはまったく違って、靜謐さのなかにある獨特の透明感が心地よい。そう、心地よいのだ。
実驗音樂であることには間違いないのだけども、多加美や「Medulla」のようにその実驗精神を聽くものに強要するところがない。そこがよい。いや、勿論、アーチストが聽き手を啓蒙する必要もあるとは思うんですよ。しかしずっとそういうものばかり聽いていたら、耳が疲れてしまう。その意味ではこの「Quiet」というアルバム、実驗的精神と自分の音樂の背景を全面に押し出しながらも、聽かせる音樂に仕上がっているところが素晴らしいと思う。