九十年代日本のアングラシーンを懷古するというかんじで、前回Optical*8の「バグ」を取り上げましたが、今回もゴットマウンテンレーベルからアルタードステイツを棚から引っ張り出してきました。
帶には、
「大阪のエクストリーム・トリオ=アルタード・ステイツ(内橋和久*G,Effects 1ナスノミツル*Bass 芳垣安洋*Drum,Perc.)が、多彩なゲスト・プレイヤーを迎えて繰り廣げる、70分を超える驚異のバトル・サウンド。」
とあります。ナスノミツルといえば、前にも取り上げたJoujoushka / unbeltipoでうねくるような重低音のベースを彈いていた人。このアルバムでも奇妙なフレーズが炸裂しています。三人のいずれもがバクテクの持ち主なのはもう最初の曲、martzmerを聽いただけであきらか。さらに驚くべきことはこのアルタード・イテイツ、基本的には即興演奏を主體として活動していたということで、これだけの整合性を持った音を果たして即興だけで演奏出來るものなのかどうか自分には正直分かりません。ゲストもとにかくアクの強いプレイヤーばかりで、例えばヴィヴラフォンの高良久美子、説明不要のバイオリンの勝井、そして目立ちまくりの卷上公一などなど。
どの曲も異樣な緊張感を持っていて聞き逃すことのできないものばかりなのですが、そのなかから敢えて、といわれればやはり卷上のボイスが異彩を放っている六曲目の「issai-kai-ku」と、長大な実驗作「suite “circle”」ということになるでしょうか。特にissai-kai-kuは声のデパートというか、デメトリオも眞っ青というかんじのボイス・パフォーマンスが堪能できる。
suite “circleは恰好いい。実驗作といっても、ラテン風のリズムと呪文めいた声と連なりから一氣に上昇していくような高揚感からはじまり、聲明のような中間部分、ベースとドラム、オパス・アヴントラを思わせるピアノの連打、サックスの雄叫びをはさんで、十四分を過ぎたあたりから、ぐんぐんと盛り上がっていくところがむちゃくちゃ格好いいんだなあ。
現在は絶版のようなのですけど、中古CD屋でこのジャケを見かけたら絶對に手に入れてもらいたい一枚であります。