モンクを取り上げようと思って、この「DOLMEN MUSIC」か、もうひとつの「DO YOU BE」のどちらにしようかと迷ったのですが、結局こっちにしました。
「DO YOU BE」は八十年代も後半にリリースされた作品で、本作に比べれば洗練されていることは確かなのですが、唄ものというか声ものを紹介するという最近のコンセプトを鑑みて、シンプルな故に声そのものの力強さを感じさせる本作の方を採ってみた次第です。
メレディス・モンクは、「DO YOU BE」の解説によると、ペルーのリマで生まれ、暫くはアメリカ國内を転々としたのち、現在はニューヨークに在住しているとのこと。作曲家にして歌手、またフィルム制作者、ディレクター、振り付け師と樣々な顏を持つ、と書かれています。そういえば、本作や「DO YOU BE」と同じECM NEW SERIESからリリースされた「BOOK OF DAYS」ではドキュメンタリー風の映畫も同時に出していましたっけ。
本作の魅力は、インディオの原始的な歌のごときスキャットにあります。樂器の方もピアノや打楽器といったシンプルなものに徹しています。ある時は鳥の声のように、またある時は獸の雄叫びのようなモンクの歌唱法は獨特のもので、本作の一曲目、「Gotham Lullaby」を聽いてぶっ飛びましたよ。最初はもの悲しげなピアノに合わせて低声のスキャットが続いたかと思ったら、突然鳥の声とも何ともつかないものが飛び出してきたんで。この歌唱法に近いもの、といわれて挙げるのは難しいですねえ。私が知っている範圍ではやはり卷上公一でしょうか。あくまで声のデパートという意味だけですけど。曲の質感は全然違います。モンクは前衞的というよりは、民族音楽の枠内で理解した方がわかりやすいと思います。洗練された音を求めるのであれば、「DO YOU BE」の方を、そしてプリミティブな音と声の魅力を求めている方には本作をおすすめします。