藤井郷子が目當てというよりは、「吉田達也絡みのやつで何か凄いやつないかな」と探していた時に見つけた掘り出し物の一品。吉田達也にマグマのような攻撃的脅迫的宗教的……要するに「あのテの音」を求めている人にはマストなアイテムといえよう。いや、その脅迫的な音に關してはマグマ以上で、ジャズというよりは完全な「こっち」(要するにプログレ)の音になっちゃっている藤井の變幻自在なピアノが腦天を直撃すれば、吉田の手數の多いドラムはこちらの心拍數をいやがうえにも高めてくれる。そしてひたすらに腹に響く早川のベースもよく聽けば藤井のピアノ以上に色々な音を奏でている。そんなマグマチックな音世界のなかで、田村のトランペットが素晴らしく歌っていて、これがいい。
特に三曲目の「FRYING TO THE SOUTH」のトランペット。思わず体を躍らせてしまうようなフレーズが愉しい。このアルバム、吉田が編集に携わっているとあって、一曲目の「THE FUTURE OF THE PAST」などは當にマグマ吉田系列の音に仕上がっている。アルバムのカラーはこの一曲で完全に決まっているのだけども、二曲目の「AS USUAL」などはマグマというよりはサムラ系ともいうべき複雜怪奇な曲展開で目が回りそうになる。確かにカルテットですから、ジャズっぽいといえばジャズっぽいんですけど、吉田のドラムがこれまた完全にジャズの世界からすれば企畫外の、音とリズムを繰り出すため、どうしたってジャズには聞こえないんですよねえ。
全七曲。まったくの捨て曲なし。しかしどの曲も聽く者に極度の緊張を強いる音である。何かマグマみたいにさ、こう、壓倒されちゃうようなアルバムってないの、という方には是非ともお勸めしたい一枚であります。