半村良の「闇の中の系圖」を讀んだら、やはり次は「黄金」ですよね。しかし本棚の何處にしまったのやら、全然見つからなくて、仕方なく、昨日ブックオフに行って、ハルキ文庫版を買ってしまいましたよ。
で、本書。
「これぞ本格ミステリ」という帶、そして二階堂黎人が絶贊していたところから興味をもって購入しました。短編がふたつに中編がひとつ。まだ短編二つを讀んだだけなんですけど、ちょっと感想を。
うーん、謎解きの部分は結構面白いです。ただ、ここ最近ミステリでは際物ばっかり讀んでいる(乾くるみとか)ので、どうにものめり込むことができないんですよねえ。
島田莊司とか、乾くるみとか、平易だけど強い印象を残す文章を書ける人というのは凄いと思う。自分にとってそういう意味で文章の巧みな作家というと、いまのところ、島田莊司、泡坂妻夫、二階堂黎人、乾くるみ。この四人が際だっている。
まあ、文体のことはおいといても、この本に収録されている短編二つのミステリとしての立ち位置は素晴らしいと思います。特に「事件に関連して奇妙なことがあり、それが事件の謎を解く鍵になっている」というのが良い。例えば最初の「Pの妄想」では、「何故罐紅茶なのか」「何故絨毯に紅茶のシミがあったのか」とか。「Fの告発」では、「何故電話は深夜十二時にかかってきたのか」のか。
話によると後半の中編「Yの誘拐」は短篇とはまた違った雰圍氣のようなので、これも期待。