高校生の時に讀んで以來だったのですが、當事の印象とはかなり違って、意外とあっさりした物語だなあという印象でした。
シリーズ第一作となる「闇の中の系圖」は主人公となる浅辺宏一の紹介も兼ねて、嘘部が仕掛ける「物語」もスケール感のある派手なものだったのですが、今回の「黄金」は騙されている側から描かれていることもあって、妙にあっさりとした展開です。
それでも一作目を讀んでいる方にしてみれば、ノッケから主人公津野田の圍碁相手として小見という老人が出てくるあたりでまずニヤリとしてしまう。
そしていよいよ今回の嘘の大舞臺である国東に主人公が乘り込んでいくところで現れる謎の美女の名前が麻績部左織。こうなると読者としてはあとはもう、主人公津野田が騙されていくのをじっくりと見守るだけということになります。
シリーズ一作ほどの緊張感はないものの、それでも半村良獨特の雰圍氣もあって、これもまたマストでしょう。
今回は以前持っていた角川文庫版が何処かに紛失してしまったので、仕方なくハルキ版を購入したのですが、ちょっと表紙のデザインもあっさりし過ぎてはいませんかねえ。
角川版だと、この嘘部シリーズの三作の表紙は杉本一文の薄氣味惡い繪柄が結構氣に入っていて、確か私の記憶だと、「系圖」の耳、そして殘りの二つは目と口だった筈。あっちの方が個人的にはお氣に入り。