うーん、自分はこの小説を解説する資格はないと思う。自分の好みではない、というのもあるんだけど、この系統の小説をうまく説明することが出來ないのです。
本の後ろにある煽り文句に曰わく、「非情の論理が唸りをあげ華麗な捻り技が立て続けに炸裂する」とあるのだけども、そもそも自分にはここでいう「華麗な捻り技」というのが、何處に、そして誰に向けられたものであるのか分かりませんでした……。自分はこの小説を完全に讀み解けていないのだと思う。
事件自體も自分には即物的に見えてしまい、探偵氷川の巧緻を極めた推理についていけず、……結局推理の結果、犯人が明らかになっても「へえ……そうなるんだ」というばかりで、新鮮な驚きを享受することができませんでした。
いや、すごく戰略的に書かれた小説であることは分かるのです。例えばこの小説は三人稱で書かれているのですが、語り手の視点が最初から最後までずっと移動するのですね。ちょっとついていけない。でもこれは作者が下手な譯では全然なくて確信犯的にやっていることなのです。53頁からこの人称の問題について作者はしっかりと言及しています。それでも、ああ、それでも自分はこの作者の戰略に最後までノることができなかった……。やはり私は本質直觀型の探偵が登場する小説の方が合っているのかなあ。讀んだ後の第一印象は法月綸太郎の「密閉教室」に似ていた。そういえばあの小説も読んだ後、何となく居心地の惡さを感じてしまったのだけども、かといってこの後に発表された法月の作品が全部自分にとって駄目かというとそうでもないので、次に期待するとしましょう。
ほか二作、「人魚とミノタウロス」、「最後から二番めの真実」も既に購入濟なので、この二册を讀んでからもう少しこの作者について考えてみたいと思います。