という譯で、竹書房の「東京伝説」を讀み返してみようと。この「死に逝く」のお氣に入りは、前にも書いた「闇鍋」です。「食わされる」「外國人」「突然の災難」という、「東京伝説」には不可缺な要素を滿たしたこの一品は當に職人藝とでもいうべき完成度で、「食べてクダサイ」という外國人のたどたどしい日本語や、不法投棄してある廃車の中で目が覚めるところなど、ディテールも完璧であります。
風變わりな一品では「ツァラトゥストラはかく謀りき」も良い。縣立圖書館でふと手にとった本に奇妙な書きこみ文字があり、それに從っていくと……、という、オーウェンの幻想小説にも出てきそうな奇想が光る。
「バルンガ」も富士の樹海で「或ること」をさせられて、……という話だけども、これも同じく着想も妙が素晴らしい一作。
「ウェス」も向こうの世界に逝ってしまった人物の描写に平山節が冴える。
という譯で結構印象に殘る作品が多く、皆さんには「闇鍋」でも是非讀んでいただきたい、と思う次第です。