デビュー當事から大ファンの乙一なのだけど、北上次郎のこの推薦文はちょっと氣に入らない。
「それまで私が持っていた小説の概念を、この作品はあきらかに超えていた。それでいて、新鮮なのだ。何なんだこれは。しかしながら、どうしてこれほど新鮮なのか、なぜこんなにもヘンな話をこの作家が書くのか、大半の小説を読んでもまだ私には分からない。乙一は私にとって、名付けようのない作家なのである。それが悔しい」
と帶にある文章をそのままザックリ引用させて頂きましたけども、……北上次郎はきっとコルタサルも、ブッツァーティも、ビオイ・カサーレスも、レムも、トーマスオーウェンも讀んだことがないのかしら。いや、きっとそうなんでしょう。
この「ZOO」を讀んだ時に思い浮かべた作家が、コルタサルとブッツァーィ、オーウェンだったのだけども、この不條理さというか、氣味の惡さって、上に挙げた作家に通じるものがあると思うのですけど如何。
ミステリの範疇でのみ、乙一をとらえていたら、彼の紡ぎ出す小説の面白さというのは解読出来ないと思う。幻想小説まで枠を広げて讀み込んでみないと。ジャンル分け不能、と帶にも書いてあるじゃないですか。だったらすべてのジャンルをひっくるめて、彼の作品を讀みこんでもらわないと。
長編では暗黒童話が現時點では一番だと思っているのだけども、収録された短編の完成度、そして飮みからいえば、この「ZOO」が頭ひとつ圖拔けている。「カザリとヨーコ」の後味の惡さ、しかしながら讀み進めていくうちに予想される当然の結末に溜息をつき、「神の言葉」のや「ZOO」の中心軸がずれているような不快感に恍惚としてみるのも良いと思う。すべてがおすすめだけども、好みからいえば、やはり「ZOO」の、竹本健治以上に狂った感覚を支持したい。