まず道子の話。これはもう、何というか綺羅光を讀んでいるようなかんじ。普通の、美しい女性が堕ちていくところを見せつけられるわけで、ミステリというよりはポルノ小説。また男のいわれるままにエロいことを強要されてしまうところなど、本当に綺羅光の小説を髣髴とさせる。
だが小學校時代は成績の良かった彼女があることをきっかけにどんどんと堕ちていき、普通の女子高生、大学生となっていくところは何か痛々しい。そして過去の男との悪夢の再會。覺醒劑まで使われて調教されてしまうとのくだりは本当に讀んでいて辛い。
一方の吉敷もまた辛い。事件を追っていくにつれ、そんな彼女の過去を知ってしまう彼の、警察官らしくない、一人の男としての態度を剥き出しにしてしまう弱さ。このあたりは本当に、島田莊司はうまい。
後半に進むにつれ、物語はどんどん展開していき、吉敷の推理によって冤罪が証明される譯だが、犯人はあからさまに名指しされていない。これって……やっぱり犯人の道子のアレなんですよね?
そして宿敵峯岸との喧嘩、道子との再會、そして彼の昇進が驅け足で書き込まれ、物語は幕を閉じる。最後の道子との再會シーンには感動してしまった。
しかし、このエピローグのおのろけ話はいらんでしょう。このあたりのクサさもまた島田節といえば確かにその通りなのだけどもねえ。