島田莊司の作品を取り上げているので、今回はちょっとレアものをひとつ。
ルボランの別册で「ユーノスロードスター」。そう、寫眞を見れば分かっていただけると思うんですけど、初代のユーノスです。このムック、出版は平成一年となっていますからもう今から十年以上前のもの。この中に「島田莊司のスコットランド紀行」と題して、「風と虹の王國」という彼のエッセイが掲載されています。頁をめくって冒頭に載っているので、このムックでも結構力を入れていたのでしょう。
「オープンカーにしたユーノスでここを走っている時ほど、至福を感じた瞬間はなかった。はじめて、本当のドライブをしたと思った。実に僕は、今までドライブというものをしていなかったのだ。日本の道は眞っすぐ行って渋滞し、また眞っすぐ行って渋滞する。ただそれだけの移動を許すに過ぎない……。」
また千葉充の寫眞が良い。荒涼としたスコットランドの風景をとらえた最初のショットは、藤原新也の「風のフリュート」の光景にも通じるものがあるし、アイルランドとかスコットランドって本当にこんなかんじなんでしょうねえ。いつかは行ってみたいものです。
彼はこの旅でエジンバラ城、セントアンドリュース、そしてネス湖などを訪れます。小説の文章ほど書き込まれてはいないのだけども、平易な一文の中にも彼特有の詩的な表現が充溢していて、今讀んでも、やはり島田莊司の文章はうまいな、と思う。
ピータ・モーガンと話をしたり、ケイターハムを訪れたり、もう何というか本当に美味しい仕事してます。作家の特權でしょうかねえ。うらやましいです。このエッセイって何かに収録されているのでしょうか。
さてこのムック、眼目はユーノスですが、ードスターだけではなく、後ろにはかつてユーノスが賣っていたシトロエンの記事も少しだけ掲載されています。まだBXとかXMの記事ですけどね。そして後ろの廣告が赤のBX。キャッチコピーが「日本のクルマ社會をヒューマンなものにしたい」。まあ、そんなこといっておいて、適當に賣った後はスタコラと撤退してしまったマツダを恨むつもりはありませんが、當事からもう少しサポート体勢がしっかりしていれば、シトロエンだって、プジョーくらい売れるチャンスだってあったのに、と思うとまあ、複雜な心境です。