札幌駅のJRタワーでパフォマーケットというのをやっておりまして、そのイベントに出演していた西川祐美というアーティストのアルバム。ライブを聽いたあと、本人から直接購入しました。プログレじゃないし、全然自分のフィールドのジャンルとは異なるんですけど、このライブのパフォーマンスが印象的だったので、取り上げてみたいと思います、というか、陳綺貞などが典型的なんですけど、自分の好きな音樂と向かい合ってひたむきに活動を續けているようなアーティストに自分は無條件に惹かれてしまうんですよねえ。
彼女の携帯のサイトがあって、それによると彼女は札幌界隈でピアノの彈き語りをやって活動しているようです。當然のことながら關東在住の自分は全然知りませんでしたよ。
本アルバムに収録されているのは全部で七曲、ピアノの彈き語りで映えるセレクトが多いのですが、アルバムに収録されている曲にはドラムや他の音もしっかり入っています。
「ありがとう」は緩急の展開がうまく調和した一曲。ピアノの語りで突然始まる冒頭から、芯の通った声で伸びやかに歌い上げる旋律は王道的な展開を見せるのですが、シンセが入る直前に效かせたフックが素晴らしい転調を見せます。劇的な盛り上がりを抑えて、控えめに曲を進めるストイックな雰囲気がいい。個人的にはこの曲がこのアルバムに収録されているなかでは一番ツボですねえ。
一転して二曲目の「Seasons」は、スキップを踐みたくなるような愉しいピアノから始まる曲。一曲目とは違った愉しい雰囲気。續く「サクライロ」は輕妙なのシンセとマーチ的なドラムをバックに伸びやかな歌聲が印象的な一曲です。
「あお」は「ありがとう」と系譜を同じくするしっとりと盛り上がる曲展開が素晴らしい。低音をいかしたピアノだけで曲は進むのですが、これが彼女の芯の通った歌聲と見事な親和を見せているところがいい。
「One」もピアノの彈き語りですが、「あお」とはやや趣を異にして、情感を抑えた歌い方がいい雰囲気を出しています。「ありがとう」もそうなのですが、彼女の歌い方はこういうかんじで感情を巧みに抑えた曲調の方が俄然映えるような氣がします。
アルバムの最後を飾る「Kiss me, I miss you」も「One」と同樣の王道的なピアノの旋律から始まるものの、要所要所の転調にはっとさせられます。ピアノの彈き語りが最大の效果を挙げられるように錬られた曲展開がいい。
で、アルバムのジャケではこの「Kiss me, I miss you」で終わっているんですけど、実は七曲目のボーナストラックが入っています。全体を通して聽けば「Kiss me, I miss you」の盛り上がりがアルバムの最後を飾るにふさわしい一曲であることは明らかで、このふっと息の抜けた曲は當にポーナストラック。しかし決して捨て曲という譯ではなくて、雰囲気は異なるものの、何となくこの曲は「ありがとう」の編曲過程で産み落とされたものなのではないかなと推測すのですが如何。
札幌で路上ライブを演っているとのことなので、關東在住の自分としては彼女のパフォーマンスにふれることは出來ないんですけど、また札幌に行ったおりにライブがあれば是非とも足を運んでみたいと思います。応援していますよ。