傑作。活劇、というわけではないけども、探偵小説というよりは、そちらの趣が濃い。派手な殺人が次々と起こりますが、実は犯人とその方法を当てるのは比較的簡單。自分は中盤で分かってしまった。二階堂黎人は手がかりをあからさまに書きすぎると思います。もうちょっと狡猾であっても良いのでは、と思うのだけども、この當たりは几帳面な人なのだなあ。
しかしこの小説の面白さは謎解き以上に怪人の活躍で、これはもう、本家の江戸川乱歩を拔いていると思う。子供の頃に二十面相を讀んだ大人であればいっそう愉しめる筈。
実はラビリンスが活躍した「悪魔のラビリンス」は未讀で、ラビリンスがどんなものか分かっていないままに讀み進めていったのですが心配無用。
とにかくド派手に事件が息をつかせる暇もなく起こるので飽きることがない。この小説が探偵小説というよりは活劇と思わせるゆえんで、犯人にあらかた目星がついていても次にどうなるのかと頁を繰るのも早くなる。
そういや、子供の頃に讀んだ乱歩だって犯人は誰だと考えながら讀み進めていた譯でもないしねえ。
物語の長さもほどよく(告白すると、人狼城は一巻で挫折したクチ)、一邊の映畫を見終わったような讀後感。個人的には法月の新作法月の新作よりも愉しめた。やはり自分にはこういう小説の方が向いているのかも。