このブログでの初レビューとして、まずはマンサンの「KLEPTOMANIA」を取り上げたいと思う。自分が購入したのは、東芝EMIからリリースされたCCDD盤のやつ。まあ、本当はもう少し待ってUK盤を手に入れた方が良かったんでしょうけど、早く聽きたかったので、まあ、仕方ないかと。
内容の方は未完成のままずっとお蔵入りになっていた四枚目を、ポールが編修したものに、アルバム未收録シングル、Bサイド、EP収録曲集と題したもの、そしてレアトラック集の全部で三枚。これで値段は 3200 円とお買い得。
では音の方はどうなのかというと、貳枚目の「Six」に近いのではと思う。「Little Kix」のようなメロメロに甘い音は少ないです。壹枚目と貳枚目の音をさらにロックよりにしたようなかんじ。「Six」ほどヒネくれた音ではないです。純粹にロックの音としてよく出来ている。逆にいうと、「Six」にあった実驗的な雰圍氣は少ないです。マンサンのすべてのアルバムにいえることですけど、今回も捨て曲はなし。
Getting Your way |
機械の作動音のような不穩なノイズにチャドのギターが重なり、イントロへとなだれ込む。このロックしている音は、「Six」にもなかったもの。どちらかというと、壹枚目の雰圍氣に近いような印象。サビのところもポールの肉聲に近く、装飾は施されていない。このアルバムの全体を象徴している曲といえる。 |
Slipping Away |
ポールの絶叫とともに始まる貳曲目もロック。サビに入る前のコーラスがマンサンらしく美しい。さらっと聽けてしまうけども、よくよく聞き返してみると構成も凝っている。サビが終わり、チャドのピアノが間奏曲として挿入される。解説によれば、この曲はチャドがソロアルバムを入れる予定だった曲の一部とのこと。ピアノのソロは突然終わり、ベースに導かれるかたちで、三曲目へ。 |
Keep Telling Myself | 何もヒネたところはない、普通のロックです。普通に恰好良い。 |
Harris |
「Little Kix」風の甘い曲。アコースティックギターとオルガン、コーラスを際だたせたシンプルな構成。 |
Love Remains |
これも恰好良いロック。構成はシンプル。チャドのギターソロもロックしている。ここまで聽いて分かると思うのだけども、シンプルな構成の曲が多い。だから「Six」のプログレっぽい複雜な構成のアルバムを望んでいた人にはちょっと不滿かもしれません。ただ素材は「Six」以上に素晴らしいと思うので、もう少し時間をかけてレコーディングを行っていれば、「Six」以上のアルバムになったのでは、と思います。惜しい。 |
Cry 2 My Face |
ポールも解説で「これはラフ・バージョン」だと告白していますが、確かにちょっと荒削りです。もしかしたらこの剥き出しのロックっぽい音は、単純にリミックスが不完全なことが理由なのかもしれません。つまりもう少し時間をかけていれば、「Six」のように前衞的で、「Little |
No Signal/No Complaints |
スローなギターにポールの声が重なり、スタンダード・ナンバーのような流れになったかと思うと、チャドのギターが際だってくる。「Six」風。ギターの音がもう少し洗練されていれば、なお良かったのだけども、まあないものねだりはよしましょう。 |
Home |
何か Coldplay のアルバムにも入っていそうなイントロ。この曲も普通に恰好良い。よく聽くと、サビの部分ではハモンドっぽい音が鳴っている。リミックスがなされていない剥き出しの音、というせいもあるのだろうけど、七十年代の恰好良いブリティッシュ・ロックというかんじ。 |
Fragile |
これも「No Signal/No complaints」にも似たスローな音。 |
Wanted So Much |
このアルバムの中では一番好きな曲。一番恰好良い。そして、一番マンサンらしいと思う。ポールの歌い方といい、ファーストっぽいかんじ。 |
Good Intentions Heal The Soul |
まあ、マンサンのアルバムの最後の曲ですから。暗い。ピアノ、ハモンド、ポールの声。すべてが不穩。後半は美しい。 |
こうして聽いてみると、やはりポールって、ピータ・ハミルなんじゃないかって思えてきた。というのも、過激で何処か狂ったような曲も書ける一方で、「Little Kix」のような甘甘のラブ・ソングをつくることも出来る。インタビューによると、ポールは今後も活動を続けていくようなので、是非とも英國の先輩ハミルを見習って、自分の信念を貫いた音樂をやっていってほしいものです。