町田の丸井ビルの一階につい最近までフードコートがありまして、土曜や日曜に買い物などで町田を訪れたおりにはよくここで晝御飯を食べたものでした。で、このフードコート、いつもボサノバやフレンチポップスがBGMで流れていまして、それを聽いた妻が「フランスの音樂ってお洒落だよね」とひとこと。
その言葉に気をよくした私がCD棚から取り出してきたアルバムは、……ええ、皆さんに説明するまでもありませんね。「フランスの音樂」といえば、まずマグマははずせないということで、「M.D.K」、アトールの「夢魔」もマストだし、そうそう「フランス語の語感って素敵」とかいっていたから、やっぱりアンジュも忘れちゃいけない。「新ノア記」も良いが、ここはノリの良い本作にするかということで、後日それらの「フランスの音樂」をCDチェンジャーに挿入して、山中湖へ妻と二人でドライブと洒落こんだのですが、……チャイニーズポップスしか聴かない妻がそのときどんな反応を示したかなんて、今更説明するまでもないですよね、うう……
…………さて、と気を取り直して、本作ですが、アンジュにとっては三作目となる「新ノア記」こと「Au-dela du delire」をリリースして油の乘っていた時期のこれは四枚目となるアルバムです。「新ノア記」はどちらかというとゆったりとした曲が多かったのですが、本作はうって変わってギターと、特徴的なクリスチャンのボーカルのやかましい仕上がりとなっています。勿論チェンバロっぽい音や、メロトロンともまた異なる獨特の音が素晴らしいアンジュオルガンも顯在で、二曲目の「Sur la trace des fees」に見られるような美しい旋律も聽きどころのひとつ。とにかく夢見るようなオルガンとギターのアルペジオが美しい。アンジュのシアトリカルな側面が大胆に現れている三曲目の「Le Nain De Stanislas」、素朴なギターにあわせながらトーンを抑えて歌われる四曲目の「Jour Apres Jour」も味わい深い。「Ego Et Deus」のオルガンやギターは何となくジェネシスの「Nursery Cryme」に入っている「The Return Of The Giant Hogweed」っぽいんですけど、クリスチャンのボーカルはガブリエル以上に濃い。アンジュの入門編としてはやはり「新ノア記」ということになるのだろうけども、捨て曲なしの本作も傑作として是非手にとってみてほしいですね。