「天空」とか良質なチャイニーズポップアルバムを出していた彼女が、自ら作詞作曲に取り組んでつくった大傑作アルバムがこれ。とにかくプログレ的というか、メロディーといい、音響処理といい、普通のチャイニーズポップスではくくれない強烈なインパクトを放っている。それでいて絶對日本やイギリスといった音樂圈から出てこないであろう獨特の音が素晴らしい。
最初の「無常」からして良い。切れ切れの歌詞とともにコクトー・ツインズ的な輕妙な音がバックで流れる。コクトー・ツインズっぽいといえば、「想像」の音などはまさにそれに近いのだけど、この曲では敢えて二曲目「浮躁」などでふんだんに使っていた例のビブラートボイスを使わずに、透明感のあるシンセと魅力のある歌聲でうまくまとめている。
「分裂」「掃興」は、當にコクトー・ツインズが提供した音で、これを聽くと、彼女が持っている音とコクトーとの音の違いを知ることができる。「不安」などはコクトーでありつつも、何處となくジャーマンっぽい雰圍氣を釀している。「堕落」もちょっと重いかんじのイントロから彼女獨特の低音ボイスで歌われるちょっと暗い歌詞が良い。
そして「野原」の幻想的な音はどうだ。浮游するギターとキーボード、そして風のように舞う彼女の声。まさにこのアルバムをしめくくるにふさわしい曲。たくさんある彼女のアルバムでもやはりこれだけは特別で、普通のチャイニーズ・ポップスから一頭圖拔けた彼女の才能を見せつけることになった大傑作であります。まずは聽いてみないと。