あまりに面白すぎて、電車を乗り過ごしてしまいましたよ(苦笑)。第四話に続く中東編で、前回の竜に引き続いて今回の敵は翼竜。もうすでに精鋭部隊のメンツも十数人で、後はもう、一人また一人と殺されていくだけなんだろうな、なんて考えていたら何と、主人公たちが馬を休めて休憩していたところに件の踊り子娘が御乱入。皆がこの女はヤバい、というのも聞かずに結局ゴリ押しで娘も同行することになったしまうという展開は予想していませんでした。しかしこの娘、ゴーマンだけどもそこが可愛い、というキャラの、「もしかしたらこの娘、レオナのご先祖様なんじゃないの」と思わせるほどのポシティブぶりが堪りません。
どうにか翼竜の一匹を倒して次の集落に辿りつくものの、何しろこの村の住人全員には尋常ではないネガティブシンキングが浸透しており、無為な戦争はやめてとにかく敵から逃げるだけという後ろ向きを極めた思想が、主人公をはじめとする勇敢な精鋭部隊の男どもと相容れる筈もありません。しかしこの長老がなかなかのキャラで、主人公たちが孫娘のお姫様を救出してくれるカモということが判るや、あれほど戦争はいかんイカンと嘯いていたというのに、最後の方には敵陣にも「我々のスパイがいる」ってアンタも色々とやってたんジャン、……と思わず爺の二枚舌ぶりに敬服しながら讀み進めると、いよいよ物語は姫の救出シーンへと流れていきます。
そういえばこの前に一悶着あって、お姫様を救出しようぜイ、と皆で盛り上がっていたところに、一人だけ猛反対していた人物がいて、それが件の踊り子娘。しかし彼女ときたら、いきなり押しかけてきて強引についてくることになったというのもスッカリ忘れて、姫の救出に対する反対意見が「このうえ、まだ女を増やす気?」とヒステリックにわめき散らすのは如何なものか(爆)。やはり彼女はレオナのご先祖様だな、とあらためて感じた次第ですよ。
飛竜とのバトルなど、前半部では動的なシーンをふんだんに盛り込んでみせてくれたのとは対照的に、姫の救出劇では推理パズルを添えているところが秀逸で、一見窮地に陥ったかのように見せかけておいて、それが槍のゲットと姫の救出という一石二鳥を狙った作戦だったことが明らかにされるなど、一難去ってまた一難というハリウッドの骨法を完全に自家薬籠中のものにして物語を盛り上げていく展開も素晴らしい。
しかし救出したお姫様がこれまた踊り子娘に輪をかけた我が儘ぶりを発揮、さらには女二人の鍔迫り合いまで盛り込んでのキャラ立ちも秀逸です。それともうひとつ、前半、飛竜を見事仕留めた主人公に対して、何でまた踊り子娘が主人公に「嫉妬しているのか?」と指摘されるほどヒステリックに喚いていたのか、その理由が最後の方で明らかにされたところはやや唖然。踊り子娘と姫の二人の鍔迫り合いだけでもモウ大変だというのに、これからいったいどうなるのか、――と妙なことが気になってしまうのでありました。
それともうひとつ、真ん中あたりに挿絵つきで出演していたヒンチンはどうなったのでしょう? 何か捨てキャラにしては結構目立っていたので、このままいなくなってしまうのはチと惜しいなあ、と思ったりと、物語の展開は勿論のこと、第四話以上にキャラの立った一冊として非常に堪能しました。
という譯で、これから次に進みます。