アレ系の重鎭、折原一の最新作。
これだけアレ系ばかりで押しまくる作者の偏執ぶりにまず敬服。またここ最近の氏の作風らしく、ネットの集團自殺という今日的な話題を扱った作品でありまして、今回も集團自殺を行った叔父の死の眞相を調べていく「僕」の視點と、集團自殺を追っていくルポライターの視點が交錯していくいつも乍らの作風です。
アレ系の仕掛けとしては一捻り、二捻りあるのですが、最初の方は見拔けました。しかし最後に出たやつは流石に分かりませんでした。しっかりと驚かせてもらいましたよ。
「序幕」と題したプロローグは、犬の散歩中の男が集團自殺した死体を見つけるという、いかにもベタなところから始まります。弟が死体で見つかったことを告げる警察の電話のシーン、密室状態で今當に殺されようとしている男の場面、更には殺人を計畫している犯人のものと思しき独白がカットバック風に流れる展開に續いて、いよいよ第一部「叔父の死」へと入ります。この序章の構成も完全にいつも通り。
ここからは「叔父殺人事件」と題した「僕」のパートと、集團自殺をしようとしている人間に取材を行っているルポライターの二つの視點が交錯しながら物語が進みます。叔父の死が本當に自殺なのか、もしかしたら叔父は集團自殺に見せかけて殺されたのではないかと疑う叔母からの依頼を受けて、「僕」は集團自殺をはかった人間の關係者に聞きこみを行っていきます。集團自殺の首謀者は生き殘り、今は病院で昏睡状態となって眠っているのですが、後半はこの首謀者が覚醒し、いよいよ真実を語ろうとするところで、驚きの眞相が明かされるという趣向がいい。
一方のルポライターの場面は、過去の部とでもいうべきもので、これから集團自殺を図ろうとする人間にインタビューを行っていきます。最後には集團自殺をする現場をとらえようと彼らの車に乘り込んでいくのですが、この間に、僕の現在とパートと目まぐるしく入れ替わりを繰り返し、サスペンスも交えて盛り上がります。
このテのミステリの定石通り叔父は殺されておりまして、この犯行がルポライターの過去のパートと交わる形で後半に展開されるのですが、ここで用いられている騙しの技術の冴えはいつも通りなかなか驚かせてくれます。この眞相は予想通りでしたねえ。しかしその後、犯人が明らかになった後でもう一つの捻りが用意されていて、こちらの方は予想もしていなかっただけに驚かせてもらいました。
技の冴えは期待通り。マンネリといえばマンネリでもあるんですけど、逆にいえば安心して讀めるというのが作者のミステリでありましょうか。ただ技のキレということでいえば、最近讀んだ「弥勒の掌」の方が素晴らしいですかねえ。まあ、作者の小説はとにかくアレ系の驚きだけの為に讀んでいるので、他作家の作品と比較して云々というのはアレでしょう。ミステリーリーグらしく、安心して讀むことが出來る作品でありました。