もう完全に旬は過ぎている本作ですけど、春季限定だし、桜も咲いたことだし、ということで今日イッキ讀みしました。
うーん、これまた「さよなら妖精」とはまた違ったコミカルな連作短篇集で思い切り愉しませてもらいましたよ。小鳩君と小佐内さんという微妙な(互惠)關係にある二人が日常の謎を解いていくという趣向なのですが、このほかにも少しばかりジャイアンテイスト入っている惡友の健吾とか、その姉の智里さんとか、いい味を出している登場人物が素晴らしい。
ミステリとしての趣向は「おいしいココアのつくりかた」が一番際だっていて愉しめました。鍋も使わないでどうやってミルクを温めてホットミルクココアをつくったのかというのを論理的に推理していくのですが、これがまた氷川透を髣髴とさせる嚴密推理で、そうか、日常の謎系でもこんなふうにロジックをたてて物語をつくることが出來るんだと感心しました。この可能性をひとつづつ潰していく過程は非常に愉しめましたよ。
主人公の小鳩くんと小佐内さんの過去は、「プロローグ」、「孤狼の心」、そして「エピローグ」で何となくほのめかされているのですけど、この二人が「清く愼ましい小市民」を目指す前にどんな事件に卷き込まれたのか凄く興味ありますねえ。
何かシリーズ化出來そうな雰圍氣もあってちょっと期待しています。そのときは外傳みたいなかたちで二人の過去の事件についても取り上げてくれることを期待しつつ。
『春期限定いちごタルト事件』米澤穂信/創元推理文庫
リサさん@Bluewing*BLOGで見かけて気になってたんですが、たまたま古本…