ザバダックや上野洋子のソロなどを聴いていると、鼻にかかったような低い聲で不思議な歌い方をしている曲とかがあるんですけど、あのネタは何かっていうと、多分、これ。ブルガリアン・ボイス。
本作はコクトー・ツインズやDEAD CAN DANCEのアルバムをリリースしてきた4ADから出ているという點でちょっと異色といえば異色でしょうか。
ブログレが好きな人だったら、不協和音の美しさっていうのは十分分かっていただけると思うんですよね。例えばこのジェズアルドの曲とか、或いはこのブルガリアン・ボイスなどがその典型だと思うのだけども、ジェズアルドが贊美歌の美しい聲を重ねたものにたいして、こちらはダミ聲、低聲、不協和音ですから、本來であれば美しい音になるはずがない、……のだけども、例えば一曲目「ビレンツエの唄」における感動的な出だしはどうだろう。そして「夜の集会」の、不協和音のコーラスをバックに歌われる美しい旋律。更には超有名作ともいえる「恋唄(トドラは夢みる)」の震えるようなユニゾン!
中村とうようは解説にいわく、「もし、あなたが、このCDでブルガリア女声合唱の神祕を初体驗するのなら、それだけの覺悟をしておいたほうがいい。まかり間違っても、学校の試験の晩あたりに初体驗したりしないように、ご忠告する」とあるのだけども、確かに民族音樂なんぞを聽いたことのない人には強烈な体驗をもたらすこと受け合いです。