あらすじに「高校の不良グループの一人が日焼けサロンで殺害された。彼の携帯には不審な電話がかかってきていた。男のしわがれた声が告げた「…ニワメ…ニワハ」の謎とは? 今だかつてない恐怖が学校を襲う」とあったりして、妙に実際の内容とは乖離しているところがアレながら、「青春ホラー」という惹句の通り、ヤンキーどもがネクラの秀才君をターゲットに虐め三昧、例によって先公は見て見ぬフリ、という定番な学園を舞台にしたホラー物語です。
で、そんなヤンキーどもが屯するなか、霊感少女ともいうべきヒロインがケータイ小説しか興味のないフツーの男女とともに文芸部を立ち上げるも、ある日ヤンキーどもは霊感スポットとして有名な山ン中の廃病院に虐められっ子を閉じこめてしまいます。
何でもその廃病院では稀代の殺人鬼が過去に自殺をし、未だその悪霊がいるのではないかという噂されているというから穏やかじゃない。で、ここからは讀者の期待通りにこの悪霊が虐められっ子に憑依して、ヤンキーの野郎どもを成敗していく、というお話です。
もっともこれだけでは物語があまりに直線的になってしまうゆえ、件の霊感少女たちがこの悪霊の仕業である連續殺人事件を追いかけていくという結構に纏めてはいるものの、話の展開は予定調和というか、ホラーでは定番ともいえる残虐なコロシ、コロシのリフレインが大開陳されるというシンプルさでありますから、讀者を怖がらせるという技巧面はハナっから放擲してしまっているゆえ、福澤怪談を所望の読者にはやや物足りないカモしれません。
コロシのディテールという点では、最初にブチかまされる日焼けサロンでの「蝙蝠」が個人的にはもっとも衝撃度大、でありまして、何だか平山センセの「メルキオール」再び、みたいな壮絶な解剖ゴッコはグロ風味も満載で、そのあたりの際どいシーンがタマらない讀者は満足出來るかと思います。
もっともその後に續くコロシは、ペンチでアレしてデブ野郎をギュウギュウ詰め、とか、沼パチンコ編でカイジがアレされた例のマニキュアでアレした後にとあるプレイを強制、とか、何だかネタが微妙に九把刀の「異夢」と被っているあたりが個人的にはアレながら、逆にいうと人間が考えつく残虐さというのは案外、このあたりに落ち着いてしまうのカモ、なんて気がしました。
最後もこれまた予定調和的ともいえる終わり方で締めくくるゆえ、驚きや恐怖といったものを期待するよりは、この定番の舞台、定番の展開を忠実にトレースして青春風味に仕上げてみせたという、――逆にいうと福澤氏らしくないそのギャップを愉しむのも面白いかもしれません。個人的には作者をモデルにしたとおぼしきホラー作家の造詣が妙に笑えて、ケータイ小説を嘲笑してみせるヒロインたちとのやりとりなど、怖さというよりはそうしたユーモアを愉しんでしまいました。