いけないいけない。先週は仕事が忙しく休日出勤もあった為、ついつい更新が遲れてしまい、結局一週間以上もまったく更新していないという状況になっているではありませんか。いや、忙しいとかいっても本はちゃんと讀んでいるんですよ。だいたい一日一册、いつも通りの調子で。しかし家に歸って來るとこれがクタクタでまともな文章をかける筈もなく、結局……という具合で、更新をしていなかった次第で。
……まあ、氣を取り直して、まずは西澤保彦の「ファンタズム」から。ファンタズムっていうから、「あの映畫」みたいに夢だか現実だか分からない状況に主人公が追い込まれて、額のせりあがったセイタカ男だの、黒衣の小人だの、或るいは宙を飛び交う銀球だのが出て來るのかなとか思っていたのですけど(この話が分からない人はファンタズム、ドン・コスカレリーでググッてみるべし)、どうやらファンタズムのファンタはファントムのファンのようでまったく違う話でした。
まあ、ミステリでもない、ホラーでもない、幻想小説っぽいかな、という氣もするのですけど、それともちょと違う。要するに出來損ないです。しかしこれは自分にとっては愛するべき出來損ないの物語ともいうべきで、何か一種異樣な雰圍氣に包まれたまま話が進んでいくあたりは完全に自分の好み。
もし作者が「例のトリック」を使おうとしたのであれば、ちょっとアレですかね。何となくこれは「アレ」なんじゃないか、……言葉でいえないのがまたアレなんですけど、……要するに私はその、違和感というか何というか、そんなかんじがしていました。特に殺人鬼と女主人公の一人がホテルで会う場面とか、「これって、どうにもハリウッド映畫みたいだな」。どうもちょっとヘンなんじゃないか、と。多分、當たっていたと思うんですけど。
ただもう少し物語を長くしてネチネチと書いていれば、立派な幻想小説に転化したようなかんじもするんですけど、この短さというのが、西澤氏の持ち味なんですかね。或いは意圖的にミステリ的、或いは幻想小説的な着地を嫌ってこのような長さに纏めてしまったのか。作者のこの物語に込めた意図を聽いてみたいところであります。