「妖星伝」を再讀して、何だかこれを機会に半村良の代表作を纏めて讀みかえしてみようと思ったりして。
半村良に夢中になっていたのは中学生の頃で、そういえば文庫で小説を購入したのも確か半村良の「獣人伝説」が初めてだったような記憶があります。そのあらかたが角川版で、ちょっとギョッとするような表紙が鮮烈な印象を残しています。
写真は自分が持っている角川版のもので、現在はハルキ文庫のものが手に入る筈です。半村良の代表作といえば、ここ最近再讀した「妖星伝」に「産霊山秘録」、「黄金伝説」などが擧げられるだろうけども、本作から始まる嘘部シリーズもその中に入れて良いでしょう。シリーズ第一作となる本作は嘘部の側から物語が展開し、二作目では事件の背後に暗躍する嘘部を外の側から描いています。個人的には主人公の浅辺宏一の御披露目となった本作がお氣に入り。
「天才的な嘘つき浅辺宏一は、味けない工員暮らしの毎日から逃れるために、次々とくり出す嘘で自分を飾っていた。
ある日、そんな彼の才能を必要とする秘密組織があらわれた。それは古代より日本の歴史を陰からあやつる謎の一族”嘘部”の集団黒虹会だった。
そして彼も叉闇の中に続く血筋の一人であることを知らされた……。
……
日本の歴史と政治の暗部にするどく切りこんだ、著者会心の嘘部シリーズ第一彈!」
主人公の浅辺はいうなれば企畫のプランナーとなって、とんでもない嘘を考え出す譯ですが、そこで使われるトリックというか、奇術が笑える。しかしそのトリックを成立させるための嘘部の手腕、こだわり振りがまた凄いのである。またしがない工員だった主人公の浅辺が黒虹会で活躍を始めるや、非情(といってもこの場合、ちょっと言葉のニュアンスが微妙に違うのだけども)に変わっていくところも興味深い。
闇の中の黄金 / 半村良
高校生の時に讀んで以來だったのですが、當事の印象とはかなり違って、意外とあっさりした物語だなあという印象でした。
シリーズ第一作となる「闇の中の系圖」は主人公となる浅辺宏一の紹介も兼ねて、嘘部が仕掛ける「物語」もスケール感のある派手なものだったのですが…