五月天のメンバーがプロデュースを行ったオムニバスアルバム。陳綺貞が「雨天的尾巴(滬尾小情歌)」で參加しており、更にはKid & Dreamというユニットで孫燕姿の歌が聴けるというところが自分的にはツボだったんですけど、それ以外にもなかなかの佳曲が揃っており、アルバム一枚として見てもかなり完成度が高いのではないでしょうか。
「INTRO」はうらびれたアコーディオンの音色だけの二十秒にも滿たない曲。すぐに低音のキーボードの音が入って孔令奇の「懶得跟ni…」のラップに續くんですけど、……自分はラップを語る言葉を持ち合わせておりませんのでこの曲はパス。すみません。
三曲目は趙之璧の「沒規矩」。風のようなキーボードと爽やかなギターをバックに、趙之璧の心地よいボーカルが素晴らしい佳曲。
旺福「新幹線」は妙なブラスの音に何だこれは、と思わせて、後は今フウの疾走するギターサウンドで最後まで押し切ります。和モノでいえば、GO!GO!7188ですねえ。途中でタメるところなどもソックリ。ちょっと舌足らずな雰囲気を殘すボーカルが可愛い。
玉榮「東海小王子」は電車の走る效果音に、透き通るようなギターサウンドと高みに昇っていくようなピアノの音が耳に心地よい曲。玉榮の無駄に情感をこめずにあっさりと歌う聲もいいですねえ。當に男性中華ポップスの王道でしょう。
kid&dream「王子・跟」は何処か異國フウの冒頭がすぐさまチェンバロやブラスっぽい音の連なりへと轉じます。一聽するだけで孫燕姿と分かる歌は流石。ラップっぽいコーラスなど雜多なアイディアや效果音などギミックも盛り澤山でかなり愉しめる曲。
そし陳綺貞の「雨天的尾巴(滬尾小情歌) 」。アコーディオンとマンドリンの音色が印象的なイントロが終わると、ギターの低音コードをバックに陳綺貞はいつもの通りの素晴らしい聲を聽かせてくれます。この曲は「吉他手」の後にこのアルバムに収録されるかたちでリリースされた譯ですが、「吉他手」で見せたギターサウンドから、新作「華麗的冒險」で展開される、ストリングスや樣々な樂器を用いたアンサンブルで聽かせる風格へと作風を變えていく萌芽を見ることが出來ます。ただこの曲は既に以前レビューした「精選 Cheer」に収録されているので、この曲だけにこのアルバムを買う價値はないでしょうかねえ、今となっては。
強辯「找尋ni 呼喚ni」はドラムとベースのリズムと、夢見るように流れるギターの音が入る導入部から、ボーカルへと續く展開がいい。盛り上がりの部分の裏で聽こえる女聲は誰なんでしょう。無理して高音部を歌い上げるところが何というか、若いですねえ。
Witness feat. AGOTA「生命要繼續」と大支「水ou水ou」ラップなんでここではパスします。
失控「未成年主張」はコードを奏でるキーボードに子供の囁きのSEが入る冒頭から、エコーのかかったピアノのバックに投げやりなボーカルが入った主題へと轉じます。ブラスや唸りをあげるベースがいい味を出しています。
許哲珮「玻璃絲襪」で再び「INTRO」の主題が奏でられます。ワルツ風のリズムにあわせて舌足らずに歌う許哲珮の聲が印象的な一曲。
という譯で、ラップの曲は自分的にはカンベしてという感じながら、「半成年主張」というコンセプトで樣々な作風の曲を一枚のアルバムにまとめ上げた手腕には脱帽しました。プログレではないし、自分のような中華ポップスファンにとっては、ラップの曲がアレなんですけど、かなり氣合いの入ったアルバムだと思います。これ、今アマゾンで調べてみたら、日本盤も出ているんですね。ちょっと驚いてしまいましたよ。