こういうの、好きなんですよねえ。
失踪した怪奇現象研究家、小林雅文の手記、という體裁を裝った本作、その内容がとにかく奇天烈で、「呪怨」のテイスト満載。この不穏さは尋常ではありません。
或る村に傳わる呪いの儀式、連鎖する呪詛、そして電波系の怪文書といったアイテムが現代的な恐怖と狂氣を盛り上げていきます。終幕がどうにも明確でないというのも御約束でしょう。それでもそれぞれのピースが最後になって次々と繋がっていく展開はなかなか愉しめます。
特に自稱靈能力者の堀光男として登場する電波男がかなりキています。アルミ箔を巻いたヘルメットをかぶり、意味不明の言葉を呟いているあたり、平山夢明や牧野修が好きな自分としては最高にツボでしたよ。
手記の體裁をとっているので、物語自體も明確な結末はありません。この手記を書いていた小林雅文が失踪したという「事実」を掲げ、そこから公式サイトと映畫の公開を契機として、「ノロイ」の物語世界が現実を侵蝕していく、という、いわゆるブレア・ウィッチ的な展開を狙っているようです。まあ、いいじゃないですか。こういうお遊びにいちいちつまらないツッコミを入れるのは不粹というものですよ。
映畫のノベライズということで、映畫の方の公式サイトもあるんですけど、一体全体本作がどのくらいこの映畫の内容を踏襲しているのかはちょっと分かりません。
大石圭の「呪怨」みたいな例もあるし、このノベライズ版が映畫の物語を完全になぞっているとも思えないのですけど、どうなんでしょう。
本作では、この呪いに巻きこまれる芸能人として、アンガールズとともに松本まりかが出演している、……というか本作を讀む限り、もしかしてヒロイン確定ですか、これは。映畫のサイトを見ても、出演者の情報もなく、果たしてまりかが本當に出演するのかも判然としません。
もっともこの公式サイト、内容を小出しにして盛り上げていく展開のようですから、ロードショーが間近になれば、出演者のデータも公開されていくのでしょうか。
しかし、まりかよ、……君はこんなホラーに出演して、清純なアイドルのイメージはもう捨てたのか、と思いつつ、よくよく思い返してみれば、すでにあの衝撃写真集「きっと。」をリリースした時點で、ファンとしても元気印の明るい清純アイドルという固定的な印象を頑なに持ち續けていてはいけなかった譯で。
今月の映画秘宝でこの「ノロイ」のプロデューサーの一瀬隆重氏のインタビュー記事があったんですけど、「リング」の松嶋菜々子をはじめとしてホラー映画でヒロインを演じた女性はそのあと總じて大成している、というような発言がありました。しかし一瀬氏、今回のまりかはこの映畫に「松本まりか」として出演している譯で、ちょっと違うのでは。
まあ、彼女のキャリアを振り返ってみると、「六番目の小夜子」から始まり「稲川淳二の戦慄のホラー 」にも出演していた譯ですから、本作のようなホラーでのヒロイン役は寧ろ適役であったと考えるべきなんでしょうかねえ。
まあ、映畫の方がアイドル女優祭の様相を呈していた映畫「呪怨」のようなテイストであれば、全然問題ありませんか。菅野美穂のようにホラー出演を契機に演技派女優として開眼する可能性もありますし。
どうにも映畫のノベライズということで、映畫に対するコメントが多くなってしまったんですけど、本作だけでも怪しくもいかがわしい雰圍氣は十分に堪能出來ます。しかし「偏執の芳香」でも鳩が惡靈を暗示するアイテムとして使われていましたけど、これって牧野修氏のアイディアなのか、それとも電波系の方々の間では、鳩イコール惡靈というのは定説なんでしょうか。氣になります。
ノロイ
映画館で、一瀬隆重プロデューサー、白石晃士監督作品「ノロイ」を観ました。
●ストーリー
2004年4月、怪奇作家の小林雅文の自宅が全焼し、焼け跡から小林の妻・景子の焼死…