ちょっと、というかかなり弱いです。
竹本健治でなければ誰も見向きしないだろうなあ、という作品。これがあのゲーム三部作の續編かと思うとちょっと哀しくなってしまいますよ。
會津地方の名家に起こった連続殺人事件、という、横溝的な舞台装置、そして綾辻行人考案、「藏壁に埋め込まれていた首なしのバラバラ死體」という魅力的な謎、そして囲碁の仕合の最中に寫された心靈写真、幽靈のごとき人影、……と怪奇風のアイテムが揃っているのに、すべてがこじんまりとしていて、最後の謎解きも妙に驅け足となっては、評價すべきところを見つけるのもちょっと難しいところです。
犯人は確かに意外だし、事件の背後にあった眞相というのも最後に明らかにされるものの、あまりに唐突で、どうにも納得が出來ません。それぞれの登場人物は竹本健治の作品らしくなかなかに魅力的なんですけど、どうにも事件の回収方法が徹底していない為に、このような凡庸な作品になってしまったのではないか、と思うのですがどうでしょう。
かつて村で起こった陰慘な言い傳えをなぞるかのように連続殺人事件が発生するという、ありきたりな展開もその凡庸さをさらに惡い方向に持っていっているような氣がするのですが、最大の問題は、竹本健治らしくない、というところでしょうか。
つまり「失楽」から「トランプ殺人事件」という流れ、或いは「クー」のようなSFも同樣なのですが、形而上的な世界觀の提示がなされていず、横溝風の陳腐な舞台装置に寄り掛かっているだけだというところでありまして、竹本健治の物語の登場人物たちであれば、これほどまでに奇矯な事件が発生すれば、そこで忽ち哲学的形而上學的な思索を始めるのが常なのですけど、この小説のなかでは登場人物たちすべてが陳腐なミステリの世界に閉じこもっているだけで、そこから飛び出してこないのですよ。それがちょっと、というかかなり不滿なところなんですよねえ。
ゲーム三部作を讀んで牧場智久探偵に興味を持ったとしても、それだけでこの物語を讀み通すのはちょっと辛いと思います。なるほど、アマゾンの新品/ユーズド価格で、こんな値段がつけられる譯も理解出來るというものです。
こんばんは、コメントありがとうございました
~失楽すら読んでないのにここに書いていいものかわかりませんが、他に適切なところが見当たらなかったので;
変拍子とは…アレですね。相当お詳しいようで驚きました。
私はまだ有名どころをいくつか聴いただけなので全然ついて行けませんが、今もっとも興味があるジャンルですね。
とりあえず失楽を読もうと思います。
まおさん、こんにちは。
「失楽」は自分も再讀したいんですけど、相当氣合いを入れないといけないので、いつも尻込みしてしまいます。「虚無」の方はそういうこともないんですけどねえ。
変拍子のアレは、……最初のうちにイギリス、ドイツ、イタリア、フランスの有名どころを一通り抑えておくと、後の愉しみが増えますよ。今のうちに再発紙ジャケものを買いまくりましょう(笑)。
失楽の感想、期待しています。