創元推理文庫で出ているスーパーとポテトのシリーズのなかでは一番まともな本作、アレ系やメタっぽい仕掛けもなく、普通のミステリに仕上がっています。ミステリのネタは長い墜落、そして密室。この中では長い墜落の謎が、いい。
今までと構成が異なっているのは、前二作が作者の存在にメタ的な捻りが效かせてあったのに對して、こちらの方はノッケから犯人の独白があり、それに續く本編の方は登場人物であるスーパーとポテトという探偵の二人が書いているという點です。
冒頭の犯人の告白にある通り、二人の手記のなかで連続殺人の犯人は指摘されるのですが、眞犯人はまったく別のところにいます。で、讀者はこの眞犯人を當てることが出來るか、というのが本作の趣向となっているのですが、……うーん、吃驚するほど凄い仕掛けではありません。いや、まさかこういうふうに來るか、とは思ったのですけど、やられた感はあまりないです。メタミステリとしての構成とアレ系の仕掛けが見事に融合していた前二作に比較すると、斬新さはあまりありませんねえ。確かに眞犯人にはメタ的な捻りがあるといえばありますけど、新本格のミステリを讀み慣れた方にしてみればまったく驚かない、當たり前の騙し方です。
そのぶん、探偵二人の手になる本編の方は本當にまともに本格ミステリしていまして、特に長い墜落の謎と眞相に至るまでの推理に關してはなるほど、と思いました。
高校の校舎から少年が飛び降りた筈なのに、校舍の建物の下には死体はなく、窓の下にあったビニールの日よけにも破れた痕跡はない。そしてその死体は四時間経過した夕方に、校定に墜落死体として発見されるという謎なのですが、三つの事件のなかではこれが一番うまく纏まっています。という譯で、本作の場合、普通の本格ミステリとして讀んだ方が吉でしょう。