2005年の本屋大賞を受賞したという「夜のピクニック」はまだ讀んでないんです。何だかミステリっぽくないし、……というか謎解きとかなさそうな物語なので。
恩田陸といえばジャンル分け不可能の作風で、ミステリ、幻想小説といった分類を軽く飛び越えて素晴らしい傑作をものにしてしまう作家でありますけど、それでも自分としてはやはりミステリに不可缺な要素である謎の提示と謎解きという二つの要素が入っている作品を好んでしまいますよねえ。
前回、恩田作品として取り上げた「ユージニア」は思っきりミステリに振った物語でしたけど、今回の「MAZE」も「奇妙な建物の正体は何か」という謎と、それを解くプロセスはまさにミステリのそれ、それでも何となく風合いが幻想小説のようであるのは、物語の舞台が亞細亞の西の果て(アラビアの砂漠?)であるということと、ラストで現れる幻想的な情景の為でしょう。
物語自体は恩田作品にしては珍しく一直線に進みます。主人公たちが建物のある場所に赴き、建物の謎を解こうと樣々な試みを行うのですが、中盤は結構怖いです。ラジコンカーにビデオをつけて建物のなかを走らせるシーンとかが凄く不氣味。映畫や大石版の小説「呪怨」もそうですけど、ビデオの画像にわけの分からないものがチラッと寫る、という描写は本當にイヤーなかんじ。
それでもさらっと乾いた雰圍氣があるのは、作者の素晴らしい筆致とこの物語の舞台によるところが大きいと思います。代表作ではないけども、自分としては結構お氣に入りの一册。