(二月十五日の續き)
食事を終えてから、お茶の香りの良い喫茶店に皆で繰り出したそうです。お茶を飮みながらも彼はずっと仕事のひとと話をしていて、この一日のスケジュールを考えればクタクタになっている筈なのに、彼には疲れた樣子も見えかなったと。まあ、このあたりは普通のレポートにある決まり文句。
臺灣ではお茶を飲みながら西瓜の種を食べたりするのですが、有栖川氏もこの堅い西瓜の種を割って中の身を食べようと頑張ったとのこと。彼は生まれてこのかた、西瓜の種を食べたことがなくて、齒と唇を巧みに使って種を割るのがおかしかったみたいで、なかなかうまくいかないものだから最後はムキになってやっていたと。で、喫茶店から出る時には練習の為に西瓜の種を一袋に手にしてこの日はホテルに歸りました。
明けて二月十六日。実はこの日が有栖川有栖にとっては本當に待ちに待った日といえたのではないでしょうか。というのも、臺灣訪問のスケジュールの中でも彼は島崎博御大に會うことを一番愉しみにしていたそうです。彼は出版社の方にも御大に対する敬意を顯していて、今回、島崎御大と臺灣における推理小説家藍霄と座談會を行うという話を聞いて大変昂奮したとのこと。この座談會の前に皆で晝食を食べたのですけど、目の前にある食事もそっちのけで島崎御大や藍霄の話を聞いていたそうです(勿論、このときの會話って通訳を會さない日本語ですよねえ?)
座談會は二時過ぎから始まったものの、會場はもう彼のファンやメディアで一杯。同時通訳方式で座談會は行われました。まあ、確かに藍霄は日本語話せないんで、當然といえば當然でしょう。ただ臺灣ではこういう形式で座談會をやることはあまりないとのことで、今回はおそらく有栖川氏が日本人、そして島崎御大が日本語も出來るということでちょっと違った形式で行われたということではと思います。座談會では有栖川有栖のミステリ観についてかなり突っ込んだ話もなされたし、軽い四方山話みたいなものもされて、ファンたちも満足したと。
この後、彼はは記者達に對して自分は子供の頃から島崎御大が編集を行っていた「幻影城」を讀んでいたと話し、また彼評論や作品の推薦はミステリ界を啓蒙していく上で、大變重要なものであったと語りました。
有栖川有栖の小説、臺灣では小知堂出版というところが最初に出していて、この國際ブックフェアで彼のサイン會が行われました。このサイン會、事前に整理券を配ったのですが、これがあっというまになくなってしまったとのことで、臺灣における彼の人氣度を物語っていると記事は纏めています。また男性のファンに比較して女性のファンの方がサイン會では多かったそうで、これは彼の作品の名探偵火村英生が女性ファンに人気があるからと書いてあるんですけど、日本ではどうなんでしょうねえ。
以下、有栖川有栖の台北觀光編へと續く。