ここ暫く歌もの、聲ものということでいくつかの作品を取り上げてきた譯ですけど、そろそろネタも盡きてきそうなので(というか單純に自分が飽きてきただけなんですけど)、今度はプログレ
で歌もの、聲ものを紹介していこうと思います。まあ、歌ものでプログレというと、アニー・ハスラムのルネッサンスあたりを取り上げるのが順當なんでしょうけども、それじゃあ面白くないので、もう少し癖のあるものを。
まずはマグマの新作。去年の末に発売されていたそうなんですけど、ここ最近アルバムは皆アマゾンで購入しているので、地元のディスクユニオンを訪れることもなく、こんなものがリリースされていたなんて全然知りませんでしたよ。
で、感想なんですけど、……これって、今までのマグマのアルバムのなかで最強なのでは?「ライブ」の怒濤の迫力はそのままに、さらにそれが精緻な構成と相俟って凄まじい気迫を感じる超強力アルバムに仕上がっています。これはもう、必聽盤ですよ!
収録されているのはまあ、御約束ですけど、タッタの三曲だけ。「K.A.Part1、2、3」とタイトルそのままに、「Kohntarkosz」からの引用もはさみながら、七十年代のマグマ節が炸裂します。
Part 1は三曲あるなかで一番せわしないです。印象的なのが、M.D.K.のような暗さがないこと。何かひたすら明るいのです。このあたりが七十年代の鬱屈した力を祕めていたマグマと大きく異なるところでしょうか。そして一曲目に顕著なのですが、M.D.K.のようなたたきつけるようなピアノが、怒濤のユニゾンやクリスチャンのせわしないドラムに良いアクセントを加えています。もうこのPart 1の迫力だけで完全に「マグマ・ライブ」を超えてます。
Part 2の出だしは「Kohntarkosz」そのもの。莊厳なコーラスが終わると、しずしずと女聲がさぐりを入れるように切り込んでくる。そのあとは素晴らしすぎるマグマ・ユニゾンが炸裂。このフレーズがまた明るいんだなあ。「Udu Wudu」のようなファンク的な明快さとは明らかに違う質感です。これが七十年代未発表曲とはいえ、それ以降は愛の賛歌を歌い續けてきたクリスチャン率いる現在のマグマの姿なのでしょう。ときおりちょっとジャズっぽい間奏をはさみつつ、最後は何となく高円寺百景みたいなフレーズを奏でてPart 2は唐突に終わります。
強烈なピアノの打音のあと、Part 3に入るのですが、一番の見せ場は後半、「ハレルヤ」の絶唱とともに爆走するところでしょう。これが凄い!「Kohntarkosz 」のPart 2以上の盛り上がり方で、もうこれは絶対ライブで聽きたいところです。
「Udu Wudu」以前のマグマが好きな人で躊躇している人がいたら絶対買いです。というか買わなきゃダメ。