なーんか小粒な作品だなあ。「赫い月照」の毒に見事にアタってしまったので、その毒を中和する為にと今朝から讀み始めたのですけど、行きと歸りの電車の中でアッという間に讀み終えてしまいました。まあ、物語の方も殺人事件があるとはいえ動機の追及などもなく、純粹に論理だけで進んでいくので、いい意味で「赫い月照」とは対極にあるような作風でもあり、中和劑としての效果は拔群であったといっておきましょう。
さて、この作品なのですが、冒頭に小粒と書いた通り、「最後から二番目の真実」に比較して寧ろ後退しているような印象を受けてしまいます。はじけっぷりは「最後から……」の方があきらかに上回っていたと思う。もっともページ數は少ないし、祐天寺美帆のようなとんがったキャラがいないというのもあるでしょう。また氷川が第三者的に事件にかかわるという點でもちょっと物足りない。ほか三作では始めから事件の渦中にいたけども、今回の場合、事件に卷き込まれるというよりは、ただ單に探偵役として召喚されただけに過ぎない。そのあたりがちょっと。
という譯でとりあえず現時點で刊行されている氷川シリーズはすべて讀了。順番は前後してしまったけども、一番小粒な本作が最後で良かったかなと思っています。個人的に一番好きなのは「最後から……」か。理由は勿論祐天寺美帆が出ていて、氷川との掛け合い、というかハズれ合いが面白いから。ただ完成度という點では「人魚とミノタウロス」が一番だと思います。