これが唄ものか、と聞かれると確かに速答は出來ないのだけども、三上寛の声があまりに個性的なので。
ボーカルの三上が個性的といいましたけども、このvajraというバンド、あとの二人が石塚俊明と灰野敬二ですからねえ。これだけ濃いメンツが妥協しないで(要するに自分の主張をすべて通して、ということだ)アルバムを一枚仕上げるとこんなフウになっちゃいますよ、という一作。
一応、六曲収録というかたちになっていますが、CDをプレイヤーに入れると一曲としか表示されません。要するにアマロックと同じで、我慢して最後まで聽き通しなさいということだ。これは……
一曲目「ふるゆきのまちにちるはいみもしらず」。灰野のギターが暗い闇に現れては消えていくこの音世界はアシュラテンペルのファーストを髣髴とさせます。そして三上の語りかけるような唄が入ると、もうそこは何というか、東日流というタイトル、そして「ふるゆきの……」という歌詞から想像される津軽の暗い雪景色が目の前に擴がり、……と聞いていると、そんな想像は灰野のギターの咆吼に木っ端微塵にされてしまう。
とにかく聽くものの感情を逆撫でするような曲展開に壓倒されてしまう一枚。よい子は聽いちゃダメ。