傑作! 氷川氏の處女作「真っ暗な夜明け」は駄目だったけど、これは面白かった。とにかく文章がこなれていて、登場人物も皆個性的。また法月ばりの堅い文章に時折挿入されるユーモアが愉しい。
登場人物の中では千歳良美と北沢巡査部長が際だっている。特にこの二人に氷川を交えた三人の会話が妙に笑える。さらに第一の殺人の犧牲者と思われる生田と氷川の学生時代のやりとりが最後のエピローグの感動と悲しみを惹き起こすのに效いている。
「真っ暗な夜明け」では煩雜に思えた氷川の推理も、今回はすっきりと頭の中に入ってきました。氷川探偵の推理は今後、北沢と良美の前で披露してもらえると、自分のような頭の惡い人間にも容易に理解出來るんだけどなあ(笑)。
「真っ暗な夜明け」を讀んだ時の感想は、「密閉教室」に似ていると書きましたけど、これは要するに處女作ゆえの拙さがそう思わせたのではないかな、と感じる次第。本作はユーモアも交えた文章も讀みやすく、處女作とは當に雲泥の差という感じで、既に購入濟みの「最後から二番目の真実」もいけるかな。
ところで作者の氷川氏って用賀に住んでいるんですかね。駅ビルの地下にある優文堂とかが出て来るし。実は自分の会社も用賀にあって、この優文堂はよく立ち寄るのですけど、小さい本屋の割には妙にミステリの品揃えが良いんですよねえ。もしかしたら作者とこの本屋ですれ違っているのかも、などと考えると一寸嬉しくなってしまう。