ついに黄金丸が誕生し、宇宙へと旅立っていく。しかし物語はお幾と一揆侍栗山定十郎二人を中心とした、傳奇というよりは時代物の展開となっている。しかし、これがいいんだ。特に最初からお幾にぞっこんの自分としては、栗山に対する彼女の甘える仕草や、その一方で百姓たちに對しては姉御ふうの話しぶりで通すところなど、そのすべてが、いい。
そして物語は栗山の死によって幕を閉じる。そうここで妖星伝は終わっているのだ。この妖星から旅だった者、そして殘された者。殘された方となったお幾と栗山の二人の、この星に対する贊歌、そして愛というものの全肯定。
ただ半村良はこれだけでは満足出來なかったんですよねえ。第五巻で中途半端に終わっていた哲学問答に決着をつけるべく、魔道の卷を掻き上げる譯ですけど、これは正直、人道の卷で迎えた大団圓の餘韻をひっくり返すような展開の仕方をしますから、人道の卷の最後、栗山の死をもって落涙した人はここで讀むのを止めてしまった方が吉。第五巻の哲学問答の續きが讀みたい、という御仁は魔道の卷に進むのが良いでしょう。
自分はとりあえず人道の卷で今回の再読は終わりということにしておきます。