中学高校時代に半村良と西村寿行を讀みまくっ自分にとって、伝奇小説にアクションを加味した本作にはたまらない魅力があるのですねえ。
半村良も「妖星伝」のようなスケールの大きさはないけども、この「竜の柩」シリーズは作者の披露する獨特の宇宙觀、というかトンデモ観の議論が大半を占めており、小説としては結構いびつな、或る意味、謎の提示と解説だけで淡々と物語が進行していくミステリに近い構成だと思う。
それでも要所要所にアクションを加味して、一般読者を飽きさせることも忘れず、一流のエンターテイメント小説になっています。
「聖邪の顏編」では日本国内だけを舞台にしていた本作も、今回は印度を始めとして、アララト山まで竜を探しに行くというスケールの大きさがキモである。九鬼をはじめとする善玉の活躍も良いのだけども、惡役が良い味をだしている。とにかくキャラが際だっていて、映畫を見ているような現實感がまた素晴らしい。