という譯で前回の續き。かなり長いタイトルをつけてしまったんですけど、まあ、そういう内容ですよ。
自分は今月號の野葡萄で太田編集長の顏って初めて見たんですけど、何かムチャクチャ若いんですねえ。黒の皮ジャンを着こなして佇むその姿は、傍らでベージュのユニクロっぽいジップアップセーターを着てつっ立っている乙一氏とは大違いですよ。で、その太田氏、「希望日後台灣日本的作家可以互相交流」(今後は日本と台湾の作家の相互交流が出來るといいですねえ)といっているんで、とりあえず今後に期待でしょうか。
ただ、これって、台湾ファウストで若手の作品を募集して、それを日本にも紹介するっていうコンセプトなんですよね、多分。だとすると、「ファウスト」というよりは「メフィスト」系の作品を期待している自分としてはちょっと、ですよ。自分としては、このブログでも紹介している、藍霄、既晴、林斯諺、冷言といった現在進行形の作家や、今後續々と発表されるであろう現代の台湾ミステリ界の傑作名作を日本に紹介してもらいたいなあ、と思っている譯でありまして。
またこの台湾國際書展の記事の後には、「青少年們!用ni們的創意突破文學的疆界ba!」(若人よ!君たちの創作意欲で文學の境界を突破せよ!)みたいな扇情的なタイトルとともに、「浮文字系列小説」(ファウスト系小説)の紹介をしているんですけど、その中で挙げられているのは西尾維新の「クビキリサイクル―青色サヴァンと戯言遣い」、清涼院流水の「ジョーカー」「コズミック」、佐藤友哉の「フリッカー式―鏡公彦にうってつけの殺人」といった作品群。その中でおや、と思ったのが冲方丁の「マルドゥック・スクランブル」と森岡浩之の「星界の戦旗」が入っていることでしょうか。
成る程、自分の中では乙一や冲方丁、森岡浩之は「ファウスト系」ではないんですけど、日本のファウスト系の小説ファンの中ではどうなっているんでしょう。どうにもこちらの方面には疎い自分には今ひとつピンと來ないんですよ。
話変わって、既晴氏のインタビューでありますが、こちらは「本月注目作家」という記事で見開き二頁に渡っての豪華なもの。もっとも影響を受けた作家に島田御大の名前が挙がっているのは嬉しいですよ。
氏の代表作「魔法妄想症」にも、御大の幻想や魔術へ傾倒した作風の影響が見られる譯ですが、このインタビューの中でも氏自らがその点について述べています。ただ私見では、氏の作風は御大の作品は勿論のこと、そこへ怪奇幻想小説ミステリへ傾斜した作風が素晴らしく、その虚構と幻想、そして狂氣というものに対するスタンスは寧ろ海野十三、夢野久作といったあの時代の変格ミステリや竹本健治といったところに近いような氣がするのですが如何でしょう。
さらにザングウィルの「ビッグ・ボウの殺人」を原書で讀もうとチャレンジ、辞書に首っぴきで丸二ヶ月もかかったこととか、島田御大の作品も原書で讀もうとして結局挫折してしまったエピソードなどが書かれていて興味深い。
また台湾ミステリの普及と発展を目的に、ミステリ仲間が集まって「人狼城推理文學奨」を創設したときの話など、台湾ミステリにかける氏の意気込みと心意氣に深く感銘、個人的には既晴氏や藍霄氏といった世代のミステリ作家と日本のミステリ作家との交流が進んでくれると、日台雙方の作品が大好きな自分としては非常に嬉しいんですけどねえ。
どうも太田氏は今後ファウスト系小説の普及に注力してしまうようですし、日本の現役作家陣の中でそういう声をあげる人は、……いないですか。島田御大と原書房の辣腕編集者T橋I毛ラインあたりでいけませんかねえ。島田荘司、島崎博両御大が台湾ミステリと日本のミステリの未來を語る、なんて企畫だったら日台雙方のミステリファンも興味津々だと思うんですけど、ダメですか。
そういえば、夢枕貘センセも訪台していたようで、作家で助教授の柯裕fenとの對談が掲載されていました。貘センセがこのあと台北市内にある八極拳をはじめとする道場巡りをしたかは謎です。
それと「BLOG WAVE 部楽格狂潮」にelielinさんのブログ「IGT偵探趣味」が紹介されていたのは吃驚でした。