前回、YBO2の「太陽の皇子 空が堕ちる」をレビューした時に少しばかり名前を出したZENI GEVAについて書いておこうと思うんですけど、實際、ZENI GEVAがプログレかっていうと激しく疑問ですよねえ。まあ、和プログレやインディーズ周辺の人脈を俯瞰すれば必ず登場するバンドでもある譯で、プログレの枠内で語ってもおかしくはない、……ということにしておいてください。
とりあえず代表作ということになると、ミュージックマガジン誌でもベスト・ロックアルバムに選出されたという本作になりますか。
プロデュースに名前を連ねているのは、ZENI GEVAとともにスティーブ・アルビニ。要するに全編激しいギターのノイズが全身に響きまくる音樂です。デスメタルや凡百のハードロックとも異なるのは、ベース不在、二人のギターにドラムスという變則的なトリオ構成乍ら、重々しい音を奏でるところでありまして、とにかく重い。重すぎます。
一曲目の「オートボディ」からして、デスメタル風の疾走するドラムの冒頭に、激しいギターが絡みつき、これまたデスメタル風のガラガラ聲が「神經遮断 感情内破」とムチャクチャな日本語をシャウトするという凄まじさです。後半に延々と繰り返されるリフが酩酊したトリップ感を生み出すところなど、やはり普通のハードロックやメタルで語れる音ではないと思いますし、なかなか説明するのが難しい作風です。
「聖痕」も全編、言葉になっていない絶叫が、サスティーンを效かせたギターの恐ろしいリフに繰り返されるというもので、何ともいえない不安感を煽り立てる曲風という點は、「オートボディ」と同じです。
「INTERCOURSE」はぶっ壞れた機械の破滅音のようなギターに續いて、「ねじこまれた最終物質」というような恐ろしい歌詞の日本語が吐き散らされるという展開。ただ裏で鳴っているリフは「聖痕」などに比較すると、それほど狂ってはいません、というか、流石にこのテの曲を二曲も續けて聴いていると慣れてくるということでしょうかねえ。
續く「ANGEL」は暗闇のなかに鉄を打ち鳴らすようなギターの音色が續き、アルビニっぽいギターのアルペジオが奏でられる冒頭部からして前の三曲と作風は大きく異なります。歌の方も絶叫ではなく、呟きに近いところから結構普通に聽けますよ。
「内破」はこのアルバムの中では超弩級の重さを持った曲。重すぎるギターの旋律が折り重ねられた前半から、「おまえの闇に満たされ、肉体がねじこまれる」という強迫的な歌詞と「内破」という雄叫びが怖すぎます。とにかくこのアルバム、何でもかんでも「ねじこまれる」作品で、正直ずっと聽いていると本当に頭がおかしくなってきますよ。
「ターミナルメルツ」は高周波ノイズのようなギターが炸裂するリフが延々と繰り返される曲、というよりも、もう完全に音の塊になってしまっています。
聽いている者の不安感を煽りたてる曲風から、聽き通すのには大變な忍耐を要するアルバム。心地よさとか高揚感とか、音樂が本來持っているポシティブな印象の一切を排し、神經を破撃するようなノイズを連ねて一枚のアルバムにしてしまったという點では、ある意味究極といえるのではないでしょうか。まあ、誰にでる聽ける作品ではありません。