昨晩のレビューは本作を讀み終えた直後に書いたゆえ、些か頭に血がのぼっていたせいもあってか(というか明らかにそれが原因)、どうにも感情的なコメントになってしまったのだけど(おまけに誤字の指摘まで受けてしまいましたよ、嗚呼……何でああいう誤字をするかな、それはやはり頭に血……)、いま一度冷静に考えてみてこの作品、どうなんでしょう。
批判の対象になるべきものは三つあると思うのですよ。ひとつは作品そのもの、もうひとつは本作を書いた作者、そして最後にこの本に大仰な煽り文句をつけて賣り出したハヤカワ。
一番非難批判罵詈雜言を受けるべきはハヤカワでしょう。これは明らか。で、次にこの作品と、作者についてなんだけど、これって本當に非難されるべきなのかどうか。
まず自分は作者の本をこれ一册しか讀んでいないので、この本が作者のキャリアの中でどの程度のものなの判断出來ないというのがひとつの問題。例えばこれが島田莊司の作品だったら、「飛鳥のガラスの靴」や「ら拔き言葉」にも劣る最低の作品、とかコメントすることも可能なんだけども、本作の場合、それが出來ない。
ていうか、これをちゃんとやろうとしたら、作者の書いたヤングアダルトもの讀まなきゃ駄目ですか、やはり。ここのあたりは昨日も書いたのですけど、作者のヤングアダルトものを讀んでいる方に是非とも本作を手にとっていただき、どの程度のものなのかの意見を聞いてみたいところです。
もう一つはこの本そのものに對する批判なのだけども、これとても「本格ミステリ」という狹い枠組みのなかではなく、今一歩下がって本作を眺めてみればまた違った評價も可能なのではないかな、と考えたりもした譯です。
このあたりは上の作者に對する批判にも共通するのですけど、案外作者の書いていたヤングアダルトものファンだったら愉しめるのではないかと。例えば自分が冗長に感じた部分だって、こういう物語の展開自体を愉んでもらうというのが作者の風格なのかもしれない譯ですし。
まあ、そう考えてみても、やはりあれだけの大袈裟な煽り文句の帶を添えた本がミステリのコーナーで平積みになっていれば、氣になりますよ。で、自分は買ってしまったと。ブランドもハヤカワミステリワールドという一流處だったし、……まあ、何をいっても仕方がない。負けは負けです。東宝東和配給の映画を見て映畫館を出て來たような氣持で一杯なんですけど、ハヤカワの策略謀略に見事やられてしまったという事実は嚴粛に受け止めないといけませんよねえ。