またまた新城カズマの「サマー/タイム/トラベラー (1)」で引っ張ろうと思うのです。というのも、今日はバタバタしていて本を讀む時間がとれなかったので、讀み返すのにも時間がかからない本作を速效で再讀してネタにしてみようかな、と考えた次第。
本書は「サマー/タイム/トラベラー (1)」の第二章、「夏休みが始まる」の冒頭において悠有が「梶尾真治の新作。エッセイ集、ていうか入門書」といってるものだと思われます。思われます、というのも、梶尾真治のエッセイ集といわれているもので自分が持っているものってこれしかないので。もし他に梶尾氏のエッセイ集で悠有が言及しているものだと思われるものがあったら教えてください。
「サマー/」の第二章冒頭では新作、といわれている本作ですけど、自分が持っている初版第一刷の日付は2003年7月7日となっています。ということは、「サマー/タイム/トラベラー (1)」で語られている夏休みって、今から二年前の出來事ということなんでしょうかねえ。
自分がざっと讀んだ限り、2003年と明確に日付を記している個所はなかったように思うのですけど、……これってもしかしてちょっとした発見、でしょうか。
着目してもらいたいのはこの初版の日付ですよ。七月七日。もう説明するまでもありませんね。このあたり、出版元の平凡社も粹なことをするなあ、と思います。
本書の壓卷はやはり第一部の「タイムトラベル・ロマンス」でしょう。當にタイムトラベルものの名作を網羅しており、本書を傍らにおきつつ「サマー/タイム/トラベラー (1)」讀んでいけば更に愉しめると思います。
また本書は海外の名作紹介とともに、「美亜へ贈る真珠」や「時尼に関する覚え書き」といった自作の解説もさりげなく披露してくれているのも嬉しいところです。
まあ、最後のところで「黄泉がえり」の紹介にかなり多い頁をさいているのはご愛敬でしょうか。映畫化もされて、今や世間では梶尾真治といえば「黄泉がえり」というかんじすからねえ。それでもあの怪作「ドグマ・マ=グロ」までが「『泣けるホラー』の名手が放つ、新たな感動」なんてキャッチコピーで賣られてしまうのにはちょっと納得がいきませんけどねえ。
本作で自分的にちょっと物足りないのは、國産の作品にあまり触れられていないことでしょうか。確かにSFにしろミステリにしろ、海外ものの方が何となく恰好はいいし、頭がよさそうだし、……とミステリにしろSFにしろ学生の頃から國産ものばかりを讀んできた自分などは皮肉っぽく構えてしまいます。
國産SFの名作を網羅した、気軽に讀めるSF紹介本、みたいなやつってないんでしょうか。梶尾氏あたりに本書みたいな讀みやすい文体で軽く仕上げていただければ、七十年代からの古典SFに目を向ける若い人も増えるんじゃなかろうか、などとオジサン世代の自分は考えてしまうのでありました。