学生水乃サトルシリーズとしては三作目となる本作。手塚治虫の漫畫に後半のスキー場の描写といい、作者が少しばかり、というかかなり趣味に走っているなあ、と思わせる作品です。正直、讀後感はちょっと、……。
まず何より最初の漫畫の蘊蓄に關する描写が長過ぎます。このあたりも好きな人が讀めば面白いのでしょうけども、稀覯本などにはまったく關心のない自分は飛ばして讀んでましたよ。
それに探偵の水乃サトルが出て來るのが遲すぎです。この蘊蓄が蕩々と述べられたあと、三分の一にさしかかったあたりでようやく登場。このサトルシリーズ、自分が求めているのはサトルとヒロインの女性との輕妙な會話にある譯で、その愉しみが三分の一もごっそり拔けているというだけで本作の魅力も半減ですな。
ミステリとしても、ほかのサトルシリーズと比較すると弱い。密室のトリックも甘いし、事件自體もぐいぐいと引っ張るほど謎めいたものでもないし、……それでも密室とみせかけておきながら、実はアレがポイントだという発想は流石だな、と思いました。でも第一、第二の事件の犯人がアレだというのはちょっと、どうでしょう。
二階堂氏も完全に愉しんで書いていることは傳わってきます。しかし、嗚呼、しかしサトルシリーズのなかではちょっと評價は低いですねえ。最初の蘊蓄の部分をもう少し短くして、中編のかたちで纏めてくれれば結構良い作品になったと思うのですけど、どうでしょう。
稀覯人(コレクター)の不思議
「稀覯人(コレクター)の不思議」
二階堂 黎人:著
光文社/920/2005.4.25
手塚治虫愛好会の会長が自宅の離れで殺され、
貴重な手塚マンガの古書が盗まれた。
しかも犯人は密室状態の部屋から消え失せてしまった!
犯人は愛好会のメンバ…
TBさせていただきましたが、
ものすごくダブってしてしまいました。
申し訳ありません。
いやがらせではなく、ミスですので
お許しくださいませ。
お手数をおかけしますが、余分は削除して
やっていただけますでしょうか。
こちらはクールですね。
こっそり読ませていただいてます。
ユカリーヌさん、こんにちは。一応、重複してたいTBは消しておきました。そちらのサイトのレビューも拝見しました。サトルシリーズの中では本作、些か二階堂氏の趣味に入っているところがあって、ミステリとしての評價は低いんですよねえ。ただ名探偵対怪人という予定調和の中で(襃め言葉)期待通りの物語が展開される蘭子シリーズと違って、サトルものは毎回趣向が違っていたりもするので、まあ、次作に期待ですかね。
稀覯人(コレクター)の不思議/二階堂黎人
(光文社 カッパノベルス)
手塚治虫愛好会の会長が自宅の離れで殺され、貴重な手塚マンガの古書が盗まれた。しかも犯人は密室状態の部屋から消えうせてしまった!犯人は愛好会のメンバーなのか?大学生、水乃サトルが持ち前の頭脳と知識と軽薄さを駆使し、高価なマンガ古…