最近の金子飛鳥というとワールドミュージックの括りで話をした方が通じるのだろうけど、このMULTI VENUSを出した当時の彼女はとにかく過激だった。
このアルバムは九十貳年のリリースで、確か彼女の初ソロアルバムだった筈。自分が金子飛鳥を知ったのは、ZABADAKを聽くようになってから。この当時のプログレ好きだったら、あのアストゥーリアス周邊の人脈からZABADAKやKARAKを知り、そして金子飛鳥やAdiなどを聽くようになった人、って結構多かったと思う。自分もそのひとり。
金子飛鳥はバイオリニストで、このアルバムは飛鳥ストリングスという自らのアンサンブルを率いて収録された驚異の一作。
まず壹曲目の「Death Dance」で度肝を拔かれる。脅迫的なバイオリンとギターのユニゾン、後期クリムゾンやマグマライブを髣髴とさせる後半の絡みはどうだ。一転して貳曲目の「月よりの警告」は神祕的な趣さえあるストリングの美しい響きが堪能できる。六曲目の「邂逅」、十曲目の「Graduale」、續く「Softly」などは泣きの旋律を效かせた、クラッシックのように雄大な曲。
しかしこれだけの傑作だというのに、amazonで檢索すると「在庫切れ」の無情な表示。一体全体日本のレコード業界はどうなっているんだい。