昨日ちょっと言及した本作、トンデモ度は「時計」よりも遙かにこっちの方が上で、少しばかりやり過ぎの感もありますけど、エンターテイメントには仕上がっています。
この作者、現在のところ書いている本はこの一册だけですが、作家というよりは寧ろ脚本家或いは映畫「催眠」のプロデューサとしての方が有名でしょうかね。
確かにあの映畫のような妙にムズムズするような感覺はこの作品にも顯著で、平山夢明ほどの破壞力はないものの、何か人の心の暗黒をえぐるようなイヤ感が物語全体に立ちこめています。
ジャケについている帶の煽り文句も強烈。「腦細胞が溶ける!携帯電話が殺す!」って、もう物語の方もそのまんまです。
見つかった死体が電子レンジでチンしたみたいに溶けていたっていうところでもう十分にトンデモ。、そこに電磁波を絡めているものだから普通にミステリが好きって人は絶對に振り向きもしないような作品であることは百も承知なんですけど、それでも強烈な印象を殘すカルト的な魅力を持っているのもまた事実でして。
それに「エコエコアザラク」の第一話がトラウマになっている自分としては、もう「腦が溶ける」って考えただけも狂いそうになります。
しかもこの主人公に隱された過去が一連の連続殺人事件に絡んでいることが徐々にあきらかにされていくのですけども、この主人公、友達と一緒に子供のころに「ある遊び」をしていまして、それがまたたまらなくイヤーなんですよ。その描写がまた強烈で、XXされたXXがXXしているところをゲラゲラ笑っているところとか、もう完全にアッチの世界の話ですよ。それを飾ったような文体ではなく淡々と描いているところがまた何ともいえない雰圍氣で、平山夢明の偏執的な文章ともまた違ったイヤ感を釀し出しています。
片時も携帯電話を手放すことが出來ないような若者にはトラウマになること必至のカルト的作品、古本屋で見かけたらとりあえず手に取ってみることをおすすめします。