台湾の島田荘司推理小説賞を主催している皇冠文化のサイトによると、何でも九月五日より台北の皇冠芸術文化中心で開催される島田荘司展では、御大の小説を原作とした二編の短編映画が公開される予定とのこと。監督は屈中恆で、撮影の様子がサイトに公開されています。この写真とか見ると一瞬、「網走発遙かなり」の「化石の街」カナ、なんて考えてしまうんですが、踊るピエロが額を撃ち抜かれて寝っ転がっているとくれば長編のアレでしょう。この車掌らしき人物が映っているところからもおそらくはアレが正解ではないかと。二編とあるからにはもう一作が選ばれている筈で、それが何なのか気になります。
このレポートによると、見事二編の作品のタイトルを言い当てた人には、今回ジャケのデザインもリニューアルされた御大の作品、全二十五作をサイン入りでプレゼントするとかしないとか。
このレポートに記述はありませんが、台湾での島田荘司展で展示される予定の、例の「斜め屋敷」の模型は、メイド・イン・台湾。すなわち、日本のものとはまた別に新たに作成されたもので、この二編の短編映画のほかにも「異邦の騎士」で御手洗が乗っていたバイクなど、日本の展示にはなかったブツも展示予定、との噂もあり、台湾在住の御大ファンとしては必見でしょう。
このサイトにはすでに最終選考に残って今回皇冠からリリースされる三冊のジャケ画があらすじとともに掲載されておりまして、ざっと台湾のミステリ界隈のサイトを巡回してみた限りだと、「快遞幸福不是我的工作」のウケが良いかんじなんですが、「十角館」以降の新本格ファンの日本人であれば、林斯諺の「冰鏡莊殺人事件」が気になるのではないでしょうか。
ざっとその内容を纏めてみると、――企業家・紀思哲のもとに怪盗エルメスから彼が所有している哲学者の草稿を盗んでやるとの挑戦状が届けられる。紀思哲は探偵・林若平に救援を要請、彼の別荘である「冰鏡莊」を怪盗エルメスとの決戦の場とするが、招待客の一人であったマジシャンの失踪とともに殺人が発生。棺に入れられていた死体の手にはカーの”The Burning Court”が握られており、さらには失踪したマジシャンのシルクハットが置かれていた。しかし再び現場へ戻ってみると件の死体は消失してしまっており、さらに館のロビーに置かれていた数体の巨大彫刻像のうちのひとつが移動している。続発する殺人。そのたびに移動する巨大彫刻像。そして殺人現場に残されているミステリ小説。一連の殺人事件の犯人は、連続殺人鬼「Jack the Impossible」なのか――、という話。
殺人事件を排除しながら怪人スフィンクスとの対決を描いてみせた問題作「尼羅河魅影之謎」や、コード型本格の定型を持ちながらも異様な「犯人」による不可能犯罪を描いた「雨夜莊謀殺案」の作者である林斯諺のこと、これは大いに期待出來るのではないでしょうか。九月になったらこの作品も取り上げてみたいと思います。