「黒い少女」と「白い老女」が同時リリースで、どっちから先に読むべきなのかちょっと判らないので、とりあえず「黒い」方から。
「黒い」方は、加護亜依が出演している方ながら、大石版の本作だと加護亜依演じる看護婦の出演シーンはちょっとだけ。おまけに瀬戸クン演じる隣人キャラも本作ではさりげなくスルーされていて、この大石版ノベライズは映像の方とはかなり内容が異なる様子。
あらすじをバッサリまとめると、ピノコが十一年の時を隔てて呪いを発動させ、周囲の者はアッチョンブリケと大騒ぎ。そこでかつては修験者を志した女霊媒師(今はエロい人妻)が「臨、兵、闘、者、皆、陣、列、在、前」と『九字切り』で挑むのだが、――という話。
呪怨といえばやはり伽椰子で、個人的には大石ノベライズ版の伽椰子はいかにも大石ワールドの住人らしい悲哀をまじえた秀逸キャラゆえお気に入りだったりするのですけど、今回、伽椰子の出番はマッタクなし。正確にいうとエピローグでチラッと出てきたりするものの、物語はもっぱらピノコの大暴走にさかれてい、おそらく映像ではこの怨念ピノコとエロっぽい元霊媒師の人妻の一騎打ちが後半最大の見せ場ではと推察されます。しかし、本作ではこの後半シーンも存外にアッサリと流しています。
このあたりがおそらくは評価の分かれるところでありまして、個人的にはピノコの感情が本作では今ひとつ伝わらないというか曖昧というか、……伽椰子は大石ノベライズ版では様々なエピソードも交えてその虐げられた過去などが読者の前に明らかにされているのに比較すると、本作のピノコはまだ本作でデビューしたばかり。今ひとつ、彼女の憎悪が伝わってこないのも仕方がないことなのカモしれません。
呪怨といえば呪いの発動と伝搬が見所で、本作でも加護亜依演じるところの看護婦などはご愁傷様としかいいようがないくらいに呆気なく御臨終となってしまうのですけど、こうした理不尽な死こそは呪怨シリーズの真骨頂。さらにはピノコの父親がエロっぽいチョッカイを出したばかりにあの世へと旅立ってしまうセクハラ犠牲者のOLなど、そうした理不尽さが醸し出す怖さは本作でも十二分に愉しむことができるかと思います。
ただ、それでも伽椰子の「あっあっ……」とかヌボーと暗闇に突っ立っているパンツ一丁の男の子など、ビジュアルな怖さを喚起するキャラがいないところはちょっと残念で、このあたりが映像化ではどのように魅せているのかは興味のあるところです。
大石作品というところから語るとすると、大石ワールドならではの濃厚さはなく、むしろアッサリした仕上がりゆえ、ほかのノベライズ版「呪怨」に比べるとちょっと弱いかな、という気がします。ただ「白い老女」とまとめて一気讀みすればまた本作の評価も変わるかもしれませんので、このまま「白い老女」に進んでみたいと思います。